コクシジウム症というのは、コクシジウムという原虫が消化管に寄生して起こる病気で、その特徴は、
寄生されていても免疫力が高ければ症状はみられず、免疫力が落ちてくると増殖して発症するというものです。
だから、体力のないベビフェレやシニアニョロによくみられるという報告があります。
また、何か他の病気を発症して免疫が下がった時にコクシジウムも併発するという事がとても多いです。
「コクシジウム」と一口で言ってもその種類は実に多く、宿主特異性が高い(ある種類は特定の動物種に寄生し、ほかの動物種には寄生しない)ことが知られています。
フェレットに寄生するのは
アイメリア属の
- Eimeria ictidea
- Eimeria furonis
イソスポーラ属の
- Isospora laidlawi
だと言われています。
コクシジウム症について
上記であげたこのイソスポーラ属は犬・猫にも寄生します。
コクシジウム症については、フェレット同士だけでなく、そういった他動物間での感染にも注意が必要とされています。
ニョロを連れて外へお散歩に行った時には、外猫(野猫)ちゃん達や、マナー違反の飼い主さんが置いていったワンちゃん達のそれから感染する可能性にも十分に注意してあげて欲しいと思います。
と言っても、こればっかりは、完璧に防いであげる事は「外」では難しいです。
せっかくの楽しいお散歩ですから、あまりムキになって、神経質にピリピリする必要は無いんじゃないかなって思います。
外での感染を防ぎたいなら、「外へ出さないしか方法は無い」って言っても過言では無いのが、このコクシジウム感染の特徴です。
コクシジウムの感染経路とそのサイクル
単細胞の寄生虫であるコクシジウムは複雑なライフサイクルを持ちます。
- 一匹のフェレットに寄生しているコクシジウムが、その体内で未成熟なオーシスト(卵のようなもの)を生み、オーシストは便に混じって動物の体外に出ます。
- 数日経つと、オーシストは成熟し、その中に胞子が作られます。これを成熟オーシストと言います。
- 成熟オーシストが付着したケージやシート、フードやオモチャなどを他のニョロリンが食べたり舐めたりする事で、成熟オーシストはそのニョロリンの体内に入ります。
- 体内では、成熟オーシストからスポロゾイトという虫体が出ます。この虫体がニョロリンの腸内で増殖し、その一部が有性生殖によってオーシストを形成し、便と一緒に体外に出ます。
- 上に戻ってエンドレスリピート
体外に出たオーシストは数か月間は感染力を持ちます。
なので、不衛生な環境下では、ほかの個体に感染したり、同じ個体が何度も感染・発症を繰り返すことになります。(※後述しますが、不衛生では無い環境でも何度も発症する子はいます)
ワンちゃんやニャンコスと一緒に飼われている場合には他動物間での感染も同様に注意してあげて下さい。
飼い主さんが片付けたとしても、少しでも便が付着したままになった草木なんかにはオーシストは残っていたりもします。
だから、外でお散歩中のそれは、もう「防ぎようが無い」事ですから、それは一先ず、置いておくとして…
感染動物の便からの感染というのがその感染経路ですから、みんなでトイレを共有できるお利口さんのニョロリン達(堂々と外す子、我が道を行く子、なども多数います)は、
一匹でも感染したフェレットがいた場合、多頭飼育下で管理されている子たちは全ニョロが感染している可能性があるという事です。
ショップから新しくお迎えしたフェレットは検査が終わるまで、先住ニョロリン達と一緒にしてはいけないというのは、この為でもあるのです。
コクシジウムが寄生しているかの検査
「お迎え症候群は某かのウイルス感染」とされていた、あの当時(そういう時代があったのですよ!)、その原因は「コロナ」か「コクシ」と言われたりもしていました。
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コロナウイルスの検査をその場ですぐに出来る(する)病院はあまりありませんが、コクシジウムに寄生されているかどうかの検査はすぐに出来ます。
簡単な糞便検査で、すぐに分かるのです。
コクシジウムのオーシストは
E.ictideaが23.6×17.5μm
E.furonisが12.8×12.0μm
くらいなので、肉眼ではさすがに見えませんが、顕微鏡ではすぐにその場で確認が出来ます。
ちなみに、今日のアイキャッチ画像が、病院でその場で見せてもらった、コクシジウムのオーシストです。
この丸いのが全部そうです。
コクシジウム症を発症した時の症状
健康な大人のフェレットなら、コクシジウムに寄生されていても通常は無症状です。
上記でも述べたように、免疫力が高ければコクシジウム症は発症しないのです。
だから、コクシジウムに寄生されている事自体「だけ」なら、何も問題はありません。
ただし
- 元気がない
- 食欲がない
- 下痢(血が混じることもあります)
- よだれ
- 嘔吐
などの症状がでている場合には、コクシジウム症の発症を疑って、すぐに病院へ連れて行ってあげて下さい。
「元気がなく、食欲が落ちてきて、下痢するようになった」子を検査したところ、コクシジウム発症と診断されました。
症例
- なんか元気が無いな
- ご飯の量が減ったな
- ウンチが緩くなってきた
- 水下痢
この1から4までの間は3日間くらいでした。
もちろん、もっと早い事もありますしもっと遅い事もあります。
その子の体力や免疫力によって、その進行や症状には差があります。
見極めとしては「下痢の症状が進む」ようなら、自宅での様子見はすぐにやめて、速やかに病院へ連れて行ってあげて下さい。
ウンチの変化
はじまりは、写真を撮るまでも無い、「普段からよく見られる」程度のゆるゆるウンチでした。
そこから、一度も固まる事無く、「下痢してる…?」が始まりました。
「そういえば、最近、元気が無かったかも…」
誰しもに経験がある事かと思いますが、こういう時はいつだって、「後から思えば~だったかも」です。
この子の場合は、たまたま保護っ子という立場であったため、小さな事でもその情報を共有する必要が人間側にあったから、こうして写真が残っているだけです。
普通はこの程度の下痢は「様子見」で済ませてしまうと思います。
始まりは本当にその程度の事でした。
「そういえば、この2~3日、食べるご飯の量が減ってきたかも」と思った時には、ウンチがこんなに少なくなっていました。
※異物が混じっていないかなどを見る為にちょっとほぐしたから、こんな形状なだけです。
脱水状態を起こさせないようにと、強制的にお水を飲ませたら、
これはもう、様子見してる場合じゃないね。って事で病院へ行った結果が、アイキャッチ画像通り「コクシジウム症発症」でした。
コクシジウム症で一番こわいのは?
コクシジウム症というのは「体力や免疫力がある健康な若いフェレット」は発症しにくくなるので、その前の段階にある、まだ体力のない若いチビニョロに発症が多い病気です。
だから、「ベビニョロの病気」と思われている方が時々いますが、上記の通り、寄生があれば、免疫力や体力が落ちたら、「どの子でも」「いつでも」発症します。
ちなみに今日の症例の子はシニアです。
コクシジウムに寄生されているとかコクシジウム症を発症したとか、そんな事は、怖がったり不安になったりするような事ではありません。
そうなった時に気を付けてあげなければいけないのは、その症状である下痢によって脱水症状を起こさせない!
これが一番、大事な事です。
脱水状態が続くと、心臓や腎臓に大きな負担がかかります。
最悪の場合は、それによって死んでしまう事があるのです。
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長引く下痢はそういった事の引き金にもなりますから、気を付けて様子を見ていてあげて下さいね。
様子見は本当にちゃんと様子を見てあげられる時だけにして下さい。
また、軽い下痢でもそれが続けば直腸脱(脱肛)を起こしてしまう事もありますから、是非、そういった事も充分に気を付けてあげて欲しいと思います。
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コクシジウム症の治療
下痢などの症状が続いてる場合にはもちろん下痢止めを、体力を消耗している場合には皮下補液などの点滴をしてもらったり、また、食欲がない場合には強制給餌の指導をされることもあります。
「治療」は抗原虫薬や駆虫薬の投与です。
コクシジウムのライフサイクルを考慮して、最低でも2週間は投薬を続けるようにと先生から指示があるかと思います。
多頭飼育のお家の場合には、
他の子にも感染している可能性があるので、全ニョロの糞便検査を促されることもありますし、全員のそれが終わるまでは「一匹ずつ隔離するように」と言われることもあるかと思います。
その際には、放牧スペースの共有トイレは一匹ずつその都度、消毒してあげなければ「隔離」の意味が無いので、それは特に念入りにしてあげて下さいね。
そして、このコクシジウムというのは、感染していたら必ず糞便中にオーシストが排出されるというばかりでは無いので、心配でしたら、期間を空けて全員分、何度か検査をしてみるという事をお勧め致します。
ただし、その投薬によって、「完全にコクシジウムを全て駆虫できる」ばかりでは無い事があります。
実際に、多頭飼育でも外へ出るわけでも無いのに、何度も発症するって子のお話しもあります。
「年齢のせい」「もともとの体質(虚弱気味)」等々、
「考えらる理由はたくさんある」と獣医さんも言っていたそうなので、だから、もうこれは、あくまでも、
「発症を抑えられるレベルまでコクシジウムを減らす、発症しないレベルまでその増殖を抑える」事が出来ればその投薬の目的は果たせてるって事なのかなって思ったりもしています。
だからと言ってもちろん、寄生が分かったら、速やかに「駆虫してあげる」のが発症させない一番の予防になる事には変わりがないのですけどね。
コクシジウム症の予防とは
コロナウィルスのように、「発症している子」のそれが感染源になるわけでは無く、「寄生されている子」なら、どの子でも感染源になりえます。
そして「寄生されている」かどうかは、検査をしなければ分かりません。
その検査も上記のように、一回では分からない場合もあります。
2回3回とやっても、たまたまそれが、オーシストの排出が無い便である可能性だってあります。
近くでその発症でも無い限り、絶対に寄生がないのかを疑って何度も繰り返し、それを調べるなんて事はまずありません。
だから、ぶっちゃけ、「分からない」んです。
皆が皆やっきになって検査を繰り返して、片っ端から寄生を無くしていくというペット社会でも無い限り、コクシジウム感染を完璧に予防してあげるなんて事は出来ません。
また、寄生されているだけなら特に問題はないとされている原虫に対してワクチンや予防薬などもありません。
一昔前は「寄生だけなら、ほとんどの子がそうじゃないか」とまで言われていたことさえあるコクシジウム。
なので、古くからの飼い主さん達の中には、
「あぁ、コクシね。トイレに熱湯ぶっかけて、下痢だけ抑えてあげたら良いよ」みたいに、すごく軽く言う人もいたりします。
これ、「寄生・感染」という言葉に怯えて過剰に不安になっている飼い主さんには覚えておいて欲しいんです。
ビクビク病気を怖がるよりも、実はこっちが正解です。
年寄りだって、たまには良い事を言うんですよ!
これ以上は、話がそれそうなので、もうそろそろこの辺で、覚えておいて欲しい事をまとめる事にします。
まとめ(先回りした早めの対処)
寄生されているだけなら問題は無いとされているコクシジウム。
免疫力が低下したり、体力が落ちたりすると一気にそれは増殖します。
某か他の病気にかかっている時はもちろん、ストレスでも免疫力は落ちます。
ベビニョロは体力がまだ無かったりします。
シニアになってくると体力も免疫力も落ちます。
だから、お迎えしたばかりのチビニョロにも、お迎えを受け入れてくれた先住ニョロにもストレスを与えないよう、
そして、可愛いチビチビニョロリンをお迎えしたら、まずは検査を受けさせてあげる。
コクシジウムがいたら、速やかに駆虫する。
もし、発症しても、早めに治療をすれば大丈夫!
獣医さんの言う通りに治療を受けさせてあげて下さい。
コクシジウムのオーシストは便に混じって体外に排出されて、数日後から感染力を持ち始めます。
飼育環境を衛生的に保ち、ケージやグッズの消毒をまめに行って下さい。
コクシジウムには熱湯消毒が効果的です。
下手な消毒剤は効きません。
※コクシジウムのオーシストを殺菌できる「唯一のもの」は「オルソ剤」「オルト剤」などと呼ばれる薬品で、一般家庭にあるとしたら「オスバン」という洗剤などになります。
鍋でケージを煮詰めるなんて出来ませんが、お風呂場でヤカンのお湯を丁寧にかけるくらいは、いつでもしてあげられる事です。
そういう時には、少しでもそういう事に気を遣ってあげて下さいね。
今日のお話し詳細その他のウダウダは、こちら『フェレットのコクシジウム症とは?』でもお話しさせて頂いていますが、実際にコクシジウム症の子のお世話をしていた時のお話しは
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コクシジウム発症フェレットお世話の仕方(多頭飼育でパンデミックを防ぐには)
前回、保護ニョロたけちゃんがコクシジウムを発症したため、里親募集を一時中断する旨をお知らせ致しました。 とても多くの「たけちゃん、頑張って!」のお声を頂いています。 中には… 想像していた通り、過剰な
xn--n8jel7fkc2g.xyz
など参考にして頂けたらと思います。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡