マダニというのは、8本脚の節足動物で、6本脚の昆虫とは違い、どちらかというとクモやサソリに近い生き物です。
一般的によく知られている家の中に住むダニ(イエダニやヒゼンダニなどの微小ダニ)とは形状も違って、掴むとなんか固いし、大きさも吸血する前の状態で約3~4mm(フタトゲチマダニの場合)もあって、イエダニなどのいわゆる微小ダニ(約0.2~0.4mm)と比べたらその差は実に約8~10倍です。
そして、マダニの唯一の栄養源は、動物の血液です。
マダニは公園や庭などの草木の陰で適度な湿度があれば生き延びることができて、栄養源である動物たちが近くを通るのをじっと待ち構えています。
吸血といえば私たちがよく知るのが蚊ですが、蚊とは口器の形状が全く違っていて、細い細いストローみたいな口器をスッと刺してサッと血を吸っていくのが蚊だとしたら、頭の一部かなかってくらいごっつい口器をガッツリ皮膚にめり込ませて、何日も何日もかけて血を吸い続けるのがマダニです(表現は全て個人的なイメージ)。
だから、気が付いても簡単には取れないんです(後述しますが叩き潰したり無理に引きはがそうとしてはいけません)。
マダニの厄介なところは、蚊のように「吸血されたら痒くなる」とかそんな可愛いレベルではなく、マダニがウィルスやリケッチア(ウィルスと同じように細胞の中でしか増殖できない微生物のこと)、細菌など実に多くの、さまざまな、病原体の媒介者であるという事です。
マダニに咬まれた事が原因で引き起こされた感染症によって亡くなられた方のお話しを耳にした事はありませんか?
2019年、マダニ媒介感染症の一つ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の報告が102件と過去最多になった。SFTSは主にマダニに刺されることで発症し、重症化すると死亡することがある。死亡例は50代以上に限られるが、致死率は27%にもなる。ペットへの感染も確認されており、ネコの致死率は60〜70%。
引用:ヤフーニュース(6/12(金) 18:05 配信)
マダニの怖さはまさにこの「感染症を起こした時の致死率が非常に高いウィルスを持っているかもしれない」という点です。
※マダニに触っただけでは何にも感染しませんから、ペットへの寄生が確認された時には過剰に恐れる事なく、しっかりと正しい方法で駆虫に努めてあげて下さい。
ちなみに、今日の写真の子は山に遺棄されていたフェレットです。
何を思ってわざわざそんな所へ放ったのかは分かりませんが、こんなに小さな体にマダニをいっぱいくっつけて、うちへ繋げてもらったこの子のことをちょっと想像してみて下さい…
「動物だから自然の中に放せば生きていける」だなんて大間違いですからね!!
マダニについて正しく知ってフェレットでも対策を…
マダニが媒介する人への感染症はとても多いのですが、マダニに咬みつかれても痛みや痒みはほとんど無く吸血されていることに気が付かないまま、そのほとんどが2~8日の潜伏期を経て、頭痛、発熱、倦怠感を伴って発症するとされています。
動物たちにも痛みや痒みは無いとされていますが、まず、多数のマダニに寄生されると貧血を起こすことがあります。
マダニは栄養源となる野生動物が出没する環境に多く生息しているとされていますが、民家の裏庭や畑、あぜ道、住宅街にある公園でもその生息が確認されています。
こちらの分布図でもお分かり頂けるように、日本国内には「マダニがいない場所なんて無い」と思った方が良さそうです。
外飼いの猫ちゃん用に
マダニは人にも危険な病原体を媒介することがあるため、外から帰ってきた猫についているマダニを見つけても無理に素手で取ろうとせず、動物病院に相談して ください。外出が多いなど、寄生リスクのある猫は特にマダニ対策が必要です。
という案内をたまに見かけます。
一人でお外に遊びに行くという状況は、フェレットではありえない事ですが、我が子がお外で何をしているのかを把握できていないペットちゃんがいるご家庭では是非とも気を付けてあげて欲しいと思います。
※私は今日日もう個人的には、猫の外飼いには賛成できないという考えの方が強いです(参考:『猫をしまえ!』)
マダニの生態・寄生の仕方
これ、そんなに詳しく要らないんじゃないかとは思うのですが…
・幼ダニ
体長:約1mm
最適な湿度化では20~30日間で卵から幼ダニがふ化して動物に寄生。3~7日間の吸血後、地表に落下し、次の発育期へと脱皮する。
・若ダニ
体長:最大で約1.6mm
3~7日間の吸血後に地表に落下。脱皮1~2週間後には、新宿主に寄生できる状態となる。
・成ダニ
体長:オス3~4mm、メス3~4mm
動物が通過する際に体熱や二酸化炭素、振動などを感知してすばやく乗り移る。約1~2週間かけて吸血する。
・飽血したメスマダニ
飽血した(吸血でいっぱいに膨らんだ)メスマダニは、地上に落下して産卵を開始。2~3週間の間に2,000個~3,000個の卵を産み、その生涯を終える。
お分かり頂けますか?
どの段階であっても「何日間もかけてずっと」そこで吸血し続けてるんです…って、ちょっともうここでごめんなさい。
私は虫(では無いけど、これ系の生き物)があまり得意ではないので、マダニの生体などその詳細についてはこちら『ヤマビル研究所:マダニ』などでお願いします。
ゾワゾワして本当に無理なんです(涙)
「生態だの何だのってそんな事よりとにかく聞いて!」って方向へ話しを進めさせて頂きます。
マダニ対策・予防って?
こちらの「ディート」「イカリジン」を主成分とする製剤について調べてみたところ、
従来からある虫よけ成分の「ディート」は、12歳以下のお子様には、年齢に応じて1日に使用できる回数に制限がありましたが、「イカリジン」にはそれがありません。そのため、小さなお子様からお年寄りまで安心してお使いいただけます。
と、KINCHO製薬さんの公式にありました。
が、「ペットへの使用」についての記載は見つけられませんでした。
また、酪農学園大学の動物薬教育研究センターには「2~8時間程度はダニを寄せ付けない効果があります」と「人間用」の案内にありまして…
要するにトータルして、人間用のマダニ対策(虫よけ)剤はあるけど、あくまでも付着数(リスク)が減少するってだけで完全に防げるとは言ってませんよ⇒現時点(2020年夏現在)では、この子達用のマダニよけは無いと私は結論を出しました。
まぁね、普通に虫除け(蚊)スプレーをしていても、花火大会に行ったら必ず数か所は刺されていたりしますから、「虫除け」に、私はもともとあんまり期待してはいないから良いんですけど…
とにもかくにも、ペットのお散歩ではマダニがいそうな草むらには行かせないしか対策は無いという事です。
ここで重要なお話しが一つ
フェレット(動物)用の「予防薬」は「虫除け」ではなく「駆虫薬」です
例えば、この子達の「フィラリアの予防薬」として投与に使っている病院も多い「レボリューション」はノミダニ駆除&フィラリア症予防のお薬です。
その仕組みは、こちら『フィラリア症の予防薬の仕組み』をお読み頂けたらと思いますが、簡単にいうと、体内でフィラリアの幼虫を殺して体の外へ一掃し「フィラリア症の発症を予防する」お薬なので、媒介とする蚊を寄せ付けないとかそんな効果はありません。
そして、レボリューションはマダニには対応していません。
マダニ対応としてポピュラーなお薬にネクスガード(犬用)などがありますが、こちらも「マダニに対して投与から24時間で100%駆除。マダニの寄生による感染が広がる前にしっかりと駆除します。」がその効能です。
「マダニを寄せ付けない」ではないのです。
動物たちに使用される予防駆虫薬というのは、「薬の溶け込んだ血液を吸わせて殺し、感染症の発症を予防する」がその仕組みです。
絶対マダニに咬まれたくなかったら、マダニがいそうな草むらに行かせないしか対策は無いのです(二回目)。
※ノミダニマダニ用として、レボリューションプラス(ストロングホールドプラス)というお薬もありますが、完全室内飼いの猫ちゃんや室内飼いである事が常識とされている日本のフェレットに初めからこちらが使われる事はあまりありませんので、お外に連れて行く機会が多いニョロ飼いさんは、獣医さんにその旨をきちんと伝えるなどして、お薬を変えてもらっておくと安心かなって思います。
フェレットが吸血されていたら
昔は、ワンちゃんにマダニがついていたら爪やピンセットなどで潰して殺す方法が一般的だったりしたのですが、マダニの研究が進んで「それはダメだ」という事が分かりました。
つぶすとその衝撃で卵が飛び散ったりして、感染症のリスクを高めてしまうことになるのです。
また先ほども言ったように、マダニというのは頭(口器)ごと皮膚に突き刺さった状態でいますから、無理やり引っ張るとその部分だけが皮膚の中に残って取れなくなってしまい、それも感染症のリスクを高めます。
必ず、動物病院で適切に処置をしてもらってあげて下さい。
病院へ行くタイミングは?
さんざん怖い事を書いてきましたが、ここで一度、冷静になって頂きたいと思います。
私は最初に、マダニの怖さは「感染症を起こした時の致死率の高さ」だと書きました。
そうです、これは、「マダニに咬まれた=怖い感染症」では無いという事です。
国立感染症研究所の発表では「致死率の高いSFTSのウィルスを持つマダニの割合は低い」とされています。
そして、マダニによる感染症のリスクがあるのならそれは「咬まれた時点ですでにある」と思って下さい。
だから、咬まれている事が分かっても「慌てず、騒がず、冷静に」です。
そこでジタバタ急いでも事態は大して変わりません。
慌てて(先ほども書いたような)間違った対処で感染症のリスクを高めてしまう方がよっぽど怖いですからね。
人もペットも慌てて救急で駆け込む事ではないです。
が、あまりノンビリしていてもダメです。
「気付いてから一番早く診てもらえる時間に行く」がそのタイミングです。
例えば、気が付いたらすぐにその場で病院へ「マダニがついている」と連絡をいれて病院へ向かう準備を始めるなどです。
そうこうしている間にマダニはドンドン大きくなっていくのでちょっと怖くなるかもしれませんが大丈夫です。
慌てず冷静に、医師や獣医師の指示を仰いで下さい。
自分は大丈夫かの確認・ペットからの感染を防ぐ
ニョロの体に一匹でもマダニを見つけたら、ご自身についていないかの確認を必ずして下さい。
こんな風に、たっぷり吸血しているマダニと、まだそんなでもないマダニでは大きさが全然違います。
ここまで何度も書いてきましたが、マダニが媒介するウィルス性の感染症で最悪の場合、人は死にます。
2016年、西日本の50代の女性が弱った野良ネコを病院に連れていこうとして手をかまれ、SFTSを発症し、その約10日後に亡くなるという痛ましい事故が起きました。
それまで、人へはマダニを介してしか感染はないとされていましたが、この時、初めて、(マダニからの感染症を起こしている)動物から人へも感染するという感染の仕方が判明したのです。
そこから2020年の今日までで「把握されているだけでも獣医療関係者7人とペットの飼い主11人が感染して、その一部は亡くなっている」と、国立感染症研究所獣医科学部部長のお話しにありました。
マダニに関する注意喚起には、山などへハイキングや山菜採りに出かけられる方へ向けたものとは別に、山などへは行かない(私のような完全インドア派の)人達へ向けたものもきちんと用意されています。
そこには、「マダニは害獣であるネズミや、外飼いの猫ちゃんやお散歩してきた犬ちゃん、などのペットにも寄生して家の中へ入ってきます。だから~」と書いてあります。
こんな事をいう必要があるのか分からないし、何を言っても、どう書いても、誤解を招きそうであれなのですが、この図を見て頂き
その上で、フェレットの保護活動者として起きた事実を元にして、フェレ飼いの皆さんにお願いしたい事があります。
元々、外でのお散歩が必要ではないフェレットを外へ連れだし、あなたとその子がマダニに寄生されたとして、もしも最悪の事態に至ってしまった時、この時と同じような偏見が「フェレット」に持たれる事になるかもとをちょっと想像して頂けますか…?
この時:『思った通り「フェレットにかまれて人が死んだ」にまで飛躍した話で今起きていること、私たち保護活動者にできること』
外へ連れて行きさえしなければ、この子達がマダニに寄生される事はありません。
ここで誤解されては困るのですが、私は別に「フェレットを外へ連れ出すな」と言っているわけでは無いのです。
私もうちの子達を外へ連れて行くことはありますから。
偏見云々はちょっと余計な一言になりましたけど、お出かけに連れて行ってあげる時には、マダニ含め、「外にはそういうリスクがあるんだ」という事をきちんと知っておいてあげて欲しいのです。
フェレットの体にマダニを見つけたら
- 外へ連れ出す以上、マダニに寄生されるリスクは「どこにでもある」という風な意識を持っていてください
- お散歩の後には入念なボディチェックをしてあげて下さい(マダニは普通のシャンプーでは死なないし、とれもしません)
- フェレットがマダニに咬まれていても慌てないこと
- あなたがマダニに咬まれていないか大至急確認をして、咬まれていたら医療機関で適切な処置を速やかに受けること
- フェレットにも速やかに処置を受けさせてあげること
- その間、感染症の疑いがある事を念頭に置いて自分は絶対にうつらないようお世話の時には十分に気を付けること
最後になりますが、フェレットとのお散歩をより安全な楽しい時間にしてもらえるよう、こちらに色々とまとめてあります。
お時間あります時にご一読ください。
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フェレット【季節ごと】散歩に連れ出すメリット・デメリットと注意事項
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健やかなニョロニョロ生活を☆彡