病気

フェレットの予防接種【犬ジステンパーウィルス感染症】ワクチンに対する偏見と誤解

この子達をペットホテルに預けよう、または、フェレット同伴のイベントに参加しようなんて思った事がある方には毎度おなじみの

「ジステンパーのワクチン接種証明書云々カンヌン」

あれ?うちのはどこにしまったっけ?なんて今慌てて探している方もおられるんじゃないかとは思いますが、今日はこのジステンパーワクチンについてのお話しです。

証明書はスマホで撮影しておくと良いですよ

ワクチン・予防接種の仕組みが分かっていない飼い主さんは、何だかとんちんかんな心配を、しなくて良い場所でされていたりします。

それだけなら別に構わないのですが、この、犬ジステンパーという病気について少しの知識も持っていないまま「ワクチンを打っているから大丈夫」等と楽観的に思い込んでいる事は本当はとても怖い事なのです。

その思い込みは、万が一の事が起きるかもしれないという想像をかき消してしまうので、もしも万が一の事が起きた時にその対処が遅れてしまうのです。

ジステンパーに感染したらその致死率は100%だと言われています。

私は発症から回復したとされる子の症例を見た事があります。

大概どこのサイトでも「感染したら100%必ず死んでしまう」と書かれている犬ジステンパーウィルスに感染したのに、何故その子が回復できたのか、その辺りの事について、そもそも、ワクチンとはどんな役割を持っているのか等と一緒に今日は詳しくご説明いたします。

双方が正しい知識を持ってさえいれば起きない『飼い主さん同士のいざこざ』に、あなたがもしも巻き込まれた時には、堂々と「自分はこう考えている」と言えるよう、今日のお話しは頭の片隅にある少し大事なメモ書き記憶フォルダに入れておいて欲しいかなって思います。

犬ジステンパーウィルス感染症とは?

名前に「犬」とは入っていますが、このウィルスには、イヌ科、イタチ科、アライグマ科、ネコ科など、ほとんどの食肉目の動物たちが感染します。

例えば、2014年末~2015年初頭にかけて中国の研究施設で飼育されていたジャイアントパンダ(食肉目)が、この犬ジステンパーウィルスに感染して死んでしまったという事は日本のニュースでも取り上げられていました。

また、それよりも大分昔の事になりますが、

1987年~88年にかけて、シベリアのバイカル湖で犬ジステンパーウィルスに感染したとみられるアザラシが大量に死んでいた事がニュースになりました。

その時は、犬ジステンパーで亡くなった数匹の猟犬をハンターが湖に遺棄し、それをバイカルアザラシ(食肉目)がつついた事が原因ではないかとされた事と、

その最中に捕獲されたアザラシが水族館に導入されていたという事などで、大変な騒ぎにもなりました。

このように、犬ジステンパーウィルスというのは、犬以外の動物でも感染し、犬よりも体の大きな動物でも死に至らしめるウィルスだという事はお分かり頂けますね?

フェレットがジステンパーウィルスに感染したら

フェレットは特に感受性が高く(若ければ若いほど高い)、感染するとその致死率は100%だと言われています。

早ければ感染して2~3週間のうちに亡くなってしまうという症例もあります。

ウイルスが体内に入ると最初にリンパ系に入って増殖し、そこから血流に乗って全身に広がり、呼吸器や消化器、中枢神経などに症状を起こします。

7~10日ほどの潜伏期間の後、発熱、食欲がなくなる、元気がなくなる、ネバネバした目ヤニや鼻水、くしゃみ等の症状が出ます。

その後に、発疹が唇や顎や鼻に出来てきて腫れたり硬くなったりします。

その時には肛門や鼠径部に皮膚炎なども起きてきたりします。

ハードパット(肉球が茶色く硬くなる)を起こし始め、進行すると肺炎を起こして咳がでるようになったり、痙攣や興奮などの神経症状も出るようになります。

感染経路は感染した動物の唾液や鼻水などの飛沫、排泄物、共有するオモチャについてる分泌物などの接触感染や空気感染です。

飼い主さんが犬ジステンパーに感染した動物と触れ合った場合、その衣類、靴、自身の手などの皮膚から、自分の子へ感染させてしまう場合も当然あります。

感染したら致死率は100%とされるこのジステンパーに対して2019年現在までその特効薬や治療方法は無いとされています。

このウィルスに関しては「予防(ワクチン)接種」しかしてあげられる事がないとされているのです。

ジステンパーワクチンとは?

まず、「ワクチン」というのは、体内にウイルスが入らないようにバリア的な効果を持つものではなく、健康な体に無毒化または弱毒化させた病原菌を入れて、体内にそのウイルスに対する免疫をつけておこう!という代物です。

我々人間のインフルエンザ予防接種でもそうですが、それらは、感染しないようにするのではなく、感染した場合に備えておこうという意味で「予防」接種と言うのです。

この「予防」という表現が様々な誤解を招いているのだとは思いますが、そんな事を今ここで言っても仕方がないので話を続けます。

その、ワクチンの効果をより確実にするために、そのウィルスへの抵抗力がどのくらいついたのかを調べる抗体価検査をする病院もありますし、

その時、抗体価が上がらなければ再度ワクチンを接種したり、異なる種類のワクチンを検討する必要があるとする場合もありますので、そうなった時にはかかりつけ医の説明をよく聞いて、きちんと納得したうえでどうするかを考えてあげて欲しいと思います。

この今、出てきた『抗体価』について、これについて知っていないと、冒頭の「回復した子」のお話しに繋がりませんし、何よりこの抗体価というのはワクチン接種の時期と密接な関係があるものなので、もう少し詳しくご説明します。

抗体価とは?効果的なワクチン接種の時期について

生まれたばかりの動物は母親の初乳から抗体と呼ばれる非常に強い免疫物質を受け取ります。

それが移行抗体などと呼ばれるものなのですが、その移行抗体がまだたっぷり体に残っている時にワクチンを接種をしてもワクチンとしての意味をなさないほど、強力なものとされています。

この移行抗体はその子自身の免疫機能が発達するにつれて少しずつ薄れていきます。

なので、この表のようにその『移行抗体の抗体価』が減少し始めた時に「ワクチン」を接種すると、そこからまた『抗体価』が高まり、体内の免疫力が上がっていくという仕組みです。

これがワクチン接種の理想の形です。

一般的には

1回目の下降時期は生後6~8週目とされ、大体のフェレット達はそれぞれのファームでその接種を受けています。

2回目:生後10~12週

3回目:生後13~14週

4回目以降:一年に一度ずつ

が望ましいと私は授業で習いましたが、これは動物病院の先生によって少しずつ考え方や方針が違い、その時期にも差があるという事が分かりましたので、それぞれが、

ニョロをお迎えをしたらすぐに病院の先生と相談し、その先生の方針をよく理解したうえで、その判断をしてあげるのが良いかと思います。

いずれにしても、ワクチンというのは間隔を開けて何度か接種することで、より効果を発揮するものだと覚えておいて下さい。

「買った時にファームで打ったと説明があったから良いかと思って」って、それ以降はワクチン接種の必要が無いと思っておられる方のお話しとか聞く事がありますけど、

そういう風に「必要無い・ある」を考える時には、接種という行為ではなく、ワクチンの効力がその子の体や生活に必要あるか無いかで考えてあげて下さいね。

フェレットのジステンパーワクチン事情

2012年の資料によると、日本にはフェレット専用に製造・認可されているジステンパーのワクチンはありません。

※FERVAC-Dなどフェレット専用のワクチンを使っていた病院もありましたが、鶏卵由来のワクチンもFERVAC-Dも2019年2月現在では製造中止となっています。

なので、この「ワクチン接種」については必ずどこの病院ででも丁寧な説明をしてきちんと飼い主さんの了承を得なければ「してはいけない」とされています。

  • フェレット専用の薬では無いという事

犬用の混合ワクチンなのだと、その旨をきちんと説明して、飼い主さんの了承を得てからでなければ獣医さんは注射をしてはいけない(後のトラブル回避のため)とされているのです。

犬用の(2種・3種それ以上の)混合ワクチンとは?

犬用のワクチンに「ジステンパーのみ」という専用のものはありません。

犬パルボウイルスや犬アデノウィルスなどフェレットには感受性のないウイルス用の抗原(抗体を作るための物質)も2種か3種、またはそれ以上入っています。

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それが「混合ワクチン」です。

だから、ニョロを絶対に外へは連れて行かない、自分も他動物と一切接触をしない、などで感染させてしまう可能性が100%無いと言い切れる飼い主さんが

  • そんな余計な抗原を接種させたくない
  • 副作用(アナフィラキシー)の方が怖い
  • ワクチン接種で発症する可能性もある

などの考えらる全ての理由を考慮した上で、ワクチン接種をしないというのは全然ありだと私は個人的には思っています。

アナフィラキシー・副作用とは?

ワクチン接種後に、多少元気がなくなるのは通常の反応です。

その日は安静に過ごせるように気を付けてあげていれば問題はありません。

ただ極稀に、ワクチン接種後に下痢や嘔吐、発熱や呼吸困難などの急性アレルギー発作を起こすことがあります。

これがアナフィラキシーショックといわれる症状です。

アナフィラキシーの症状はフェレットの場合、接種後約30分以内に起こるとされていますので、ワクチン接種後は少なくても30分は病院内やその近くで様子を見ていてあげて下さい。

また、それ以降でも、お顔が浮腫んできたり嘔吐、下痢などの症状が出る場合もあります。

それはワクチンの副作用かもしれませんので、大至急、病院へ連絡をして獣医さんの指示をあおいで下さい。

副作用といわれる症状がでるのは約24時間程度以内とされていますので、ワクチン接種をした日はくれぐれもゆっくりと安静に過ごせるよう、いつもより十分に気を付けて見ていてあげて欲しいと思います。

多頭飼育のお家では、その日は他の子と遊ばせたりしないで特別にお姫様・王子様のような待遇でのんびりと過ごさせてあげて下さいね。

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ワクチンの接種で発症する可能性は0じゃない…?

先ほども言いましたが、ワクチンというのは無毒化または弱毒化させた病原菌を体内に入れる事です。

まったくの無毒ではない以上、接種したその病原菌に感染して命を落とす可能性は無いのか、以前、聞いてみたところ「これまで一度もその症例は無かったとは言い切れない」との回答がありました。

「ただしそれは、まだフェレットについての研究が今ほど進んでなかった時代の話しだし…」などと続いてはいましたが、ここから先のお話しは私が集めた薄っぺらい確率統計論なんかで答えを出すような事ではなく、

それぞれが担当獣医さんの考えを聞いて個々に考えるべき内容だと思いますので、どうかくれぐれも「かかりつけの先生と相談する」事をしてあげて下さい。

ワクチンは打てば良い、うたない方が良い、うってるから良い、うってないからどう…みたいな簡単なものでは無いのです。

大切な我が子の体。

きちんと知って、その子にはどうしてあげるのが一番良いのかを考えてあげる事をいつでも忘れないでいてあげて下さいね。

回復した子はジステンパーに対して抗体を持っていたから

「ジステンパーに感染しても治った子がいる」と、この結果だけを話す人がどこかにおられるようで、だからワクチン接種はしなくて良いという答えに至った過程が抜けてしまっている飼い主さんに出会った事があります。

私が知る限りたった2例しかありませんが、回復できた、頑張ってくれたその子達はいずれも「ワクチン接種をしていた子」です。

ここまでずっと述べているように、抗体を持たない体でジステンパーに感染してしまったら致死率は100%です。

体の中に闘える抗体を先に十分に持たせていてあげなければ、その子がどんなに頑張ってくれても体はウィルスには勝てないんですよ。

そこを間違わないで下さい。

本来であれば、ワクチン接種をしているのだから、その病気にはならずに済むのが一番の理想ではあります。

ですが、上記でも何度も述べたようにワクチンというのはバリア(防御)のような効果があるわけでは無いのです。

元々の体質によってはワクチンを接種しても抗体が上手に理想値まで作れない子だっています。

それでも、ある程度までは…その少しだったとしても、闘える抗体、免疫があったからこそ、感染してもその症状が軽く済んだ、だから回復出来たって事をちゃんと知っておいて下さい。

先の獣医さんには「抗体があったからといって必ずしも回復できる子ばかりでは無い、むしろ死んでしまう子の方が圧倒的に多い」と言われました。

だから、回復できた子達の例を入れたとしても、その致死率は「限りなく100%に近い、少なく言ったとしても99.9999…%としか」との事でした。

ジステンパーの特効薬や治療方法はありません

冒頭でも書いた通り、ジステンパーウィルスに関して「してあげられる」事はワクチン接種が唯一です。

治療薬も治療法もありません。

治療方法が無いので、二次感染を防ぐために抗生物質を投与したり、輸液や栄養管理などの対処療法が中心になります。

ホメオパシー治療やインターフェロン治療は免疫力や抵抗力を上げてあげるための治療です。

抗体を持った体でさらに免疫力を高めてあげる。

これが回復できた子達の症例です。

きちんとした前例になると私は思っていますので、それらは是非ともやってあげるべき治療だとここでは記しておこうと思います。

検査で陽性が出ても…

ジステンパーに限らず、致死率が高い病気の疑いの場合、検査で「陽性」と出たら、『即座に安楽死を勧められた』というお話しを聞く事があります。

私の安楽死に対する考え方はこちら『愛情があるからこその「安楽死」という選択』などをお読み頂きご理解下さい。

今日はそういう個人的な感情論ではなく、ジステンパーの検査で陽性が出た時の心構えをお話しさせて頂きます。

ジステンパーの検査というのは「段階評価」の場合が多いです。

どんな検査でも5段階評価の「3」までは「微妙」というのが通説です。

フェレットがジステンパーの検査をしたら「2」とか「3」とかって結果になる事は実は結構あるのです。

それは接種したワクチンの抗原に反応している場合があるからです。

1回の抗体検査で陽性だったからと言って必ずしもそれが、ジステンパーに感染しているという事では無いのです。

更に1か月の後の再検査によって抗体価を調べて、より確実な診断結果を得なければ確実な事は分からないくらい微妙な検査だったりするので、たった一回のその結果が陽性だったからと言って、即座に絶望したり安易に安楽死を選択したりしないで下さい。

たった一度の陽性反応=確定ではありません

これだけは本当に覚えておいて下さいね。

そしてもしも仮にその結果が「5」だったとしても、それは、「今すぐその病気で死んでしまいます」って意味ではありません。

そこから先は色々な考え方があるかとは思いますが、最後まで、目の前の命から目を背けるような事だけは決してしないであげて欲しいと思います。

ここまで超長文になってしまいましたので、書き出しにありました「ジステンパーのワクチン接種証明書云々カンヌン」につきましては、こちら『フェレットにワクチン接種(予防薬)しなくたって良いんです!』など、お時間のある時にお読み頂けたらと思います。

健やかなニョロニョロ生活を☆彡

 

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