まずはじめに、今日のアイキャッチ画像の説明となりますが、これは、大きく顔を腫らしたこの状態で病院へ行った時、「口腔内腫瘍である可能性があります。その場合には最悪の事態を覚悟して下さい」と言われた、うちのわさびです。
結果として「歯根膿瘍」という診断になりましたが、「最悪の事態を覚悟しなければならない口腔内の腫瘍であった場合=口腔領域に初発症状を呈したリンパ腫であった場合」
リンパ腫とは、いわゆる「がん」の事です。
フェレットの口腔内にできる腫瘍は
- 悪性リンパ腫である
- リンパ節転移を生じやすく
- 転移が見られない場合、もしくはごく早期なら外科手術(切除)なども可能だが放射線治療や化学療法も必要である
- 悪性度が高く顎骨への浸潤を起こしやすいため予後は不良
等々と言われていて、もしもそうであった場合には、どう転んでも飼い主として覚悟を決めるしかないとされているのです。
予後不良とは?
治療後の経過あるいはその見通し(予後)が良くないこと。病気やけがの性質(重大性)によって意味が異なる。
主に以下のような場合を表す。
- 後遺症が残る
- 治癒(回復)が望めない
- 進行(悪化)が抑えられない
- 再発する
- 重篤な副作用が起きる
- 延命が困難である
- 死亡する
出典:Wikipedia「予後不良」
そんな事を言われたって、覚悟なんてそう簡単に出来るはずはありません。
その当時のリアルタイムの日記はこちら『フェレット【わさびの療養記録】口腔内の腫瘍(がん)とは?歯根膿瘍とは?』などをお読み頂けたらと思いますが、今日はその「リンパ腫」について、ザックリと大きな括りでのその病気のお話をまとめてみようと思います。
フェレットのリンパ腫(リンパ肉腫、リンパ性白血病)とは
白血球のうち「リンパ球」と呼ばれるものがガン化して起こる病気、いわゆる、「血液の癌(がん)」です。
(我々人間も含めた脊椎)動物の体には血管のように全身に張り巡らされたリンパ管という組織があり、リンパ液が流れています。
そのリンパ液を運搬する導管ネットワークをリンパ系と呼び、このリンパ系には、老廃物を取り込んで排泄したり、免疫細胞を作るなどの機能があるのですが、この免疫細胞の1つが「リンパ球」です。
そして、リンパ管は、頸部(けいぶ:首のところ)、腋窩(えきか:脇の下ら辺)、縦隔(じゅうかく:肺のとこら辺り)鼠径部(そけいぶ:足の付け根のところ)などで合流して、リンパ節を形成しており、そのリンパ節にリンパ腫は発生する事が多いとされています。
が、リンパ球が存在している以上、全身どこのリンパ組織でもリンパ腫は発生する可能性があります。
また、リンパ節だけに限らず、脾臓、肝臓、腎臓、腸管、骨髄、脊髄など多様な部位でその増殖が確認できる事があります。
それらの場合、その増殖した部位により、リンパ肉腫、リンパ性白血病などと様々な呼び名となりますが、それらは基本的には同じ病気とされます。
生後4か月ほどで発症したフェレットの症例があり、そこには「若ければ若いほど進行が早く、急激に衰弱する」と書かれていました。
成フェレットでは、「そこまで急激な病状の進行は無く、非特異的症状が慢性的に見られる」とされています。
非特異的症状とは?
副腎疾患などの場合に見られる左右対称の脱毛など、「病気の症状」とされるものの中には、特定の病気やいくつかの病気などに限り、独特で、その原因を特定しやすいものがあります。
この場合、その左右対称の脱毛は副腎疾患の特異的症状と言えます。
「元気が無い」、「食欲が無い」、「体重が減る」など、何らかの病気の症状ではあるけれど、
その症状だけではハッキリと原因を特定できない症状を非特異的症状と言います。
※特に病気がなくても、一時的にこうした状態になる場合も日常ではよく見られます。くれぐれも日常のそれと病気の非特異的症状である場合を見誤らないように気を付けてあげて下さい。
その症状が長く続くような時は「いつもの事ね」では無く、何らかの病気の非特異的症状だと疑い、
速やかに病院へ連れて行ってあげて下さいね。
リンパ腫の症状とは?
一般的な症状として、
- 元気がない
- 食欲が無い
- 体重が減る
などといった、非特異的症状があります。
- 微熱
- 脾腫
などもその症状とされていますが、これらは全て、明確には分かりにくい症状であるため、飼い主さんが気が付かないうちに進行している場合もあります。
また、リンパ腫ができる場所によって、さまざまな症状が見られます。
リンパ節にできた場合
リンパ節が大きく腫れあがります。
- 肩
- 腋の下
- 顎
- 股
- 大腿部
など、体表にあるそれらに出来た場合には、視診や触診で発見出来ます。
毎日のお世話で体を触った時にしこりに気付いたら、こちらを疑って病院へ連れて行ってあげて下さいね。
胸腔内にできた場合
腫れあがったリンパ腫が肺を圧迫したり、胸水が溜まる事などから呼吸困難を起こします。
苦しそうな咳が続くといった症状もその特徴であるとされています。
こちらは、単なる(喉の)毛詰まりでしたが、胸水が溜まった時などに見られる「苦しそうな咳」に非常に近いと病院の先生からも「参考にしてもらえる動画」と言われたので、ぜひ一度、ご確認頂けたらと思います。
腹腔内にできた場合
腫れあがったリンパ腫が消化管を圧迫するため、
- 食欲不振
- 下痢
- 便秘
- 血便
- 嘔吐
が続き
- 排尿困難
が見られる事があります。
下痢止めのお薬などではその症状が改善されないのがその特徴です。
脊髄や骨髄にできた場合
リンパ腫が
脊髄(脳と体の各部分を繋ぐ器官)にできると、神経症状がおこり、痙攣や麻痺などの症状が現れます。
骨髄(骨の中にある血液を造る組織)にできると、貧血になり顔色が悪くなったり、出血が止まらなくなったりします。
※注意
リンパ節は細菌感染などで炎症を起こしている時も腫れる場合があります。
シコリを見付けたからと言って、その全てがリンパ腫というわけでは無いので慌てないで下さいね。
過剰に不安になる必要もありません。
まずは、獣医さんにきちんと診てもらってあげて下さい。
また、リンパ腫は、症状が出ている時期と症状が収まっている時期(寛解期)が周期的に起こるとされる病気です。
治療法は?
例えば、病気が発覚した時点では、ただ1つのリンパ節にだけ腫瘍が認められたのだとしても、最初に説明した通り、リンパ液は全身をめぐっています。
その1つを切除したとしても、腫瘍細胞を取り除いた事にはなりません。
だから基本的に、切除手術は「行われない」とされています。
が、切除する事によっての延命が期待できる場合や、それよりも生活の質が少しでも高められる事が期待できるなどの場合には、その為の外科手術を行う事もあります。
※その場合でも抗がん剤治療は並行して行われる場合がほとんどです。
一般的な治療としては、
- 抗がん剤による化学療法となります
- 抗がん剤治療には副作用があります
また、
抗がん剤が効きやすい状況ばかりでは無く、できている場所や進行状況などによっては効果がほとんど期待できないという場合もあります。
そして、
その抗がん剤の治療であってもリンパ腫が完治するという事は無いとされています。
治療で腫瘍細胞を限りなく0に近づけてあげる事が出来たとしても、それは0ではないという事です。
残ったそれが再び悪さをする状態を「再燃」と言います。
抗がん剤治療の後、半年以上、再燃が見られなかったとしても、「完治」ではなく「寛解(かんかい:全治とまでは言えないまでも病状が治まっておだやかであること)」という表現になります。
腫瘍細胞が再び暴れ出す再燃と症状が治まる寛解の状態を繰り返すとされるリンパ腫の治療は「一生続くもの」だと考えておいてあげた方が無難かと思います。
抗がん剤治療について
リンパ腫に効果があるとされる「抗がん剤」は多種あり、それぞれ投与経路や効果、副作用が違います。
が、一部のものを除いてそのほとんどが静脈注射になるのですが、我々人間と同じように、同じ場所にずっと静脈注射を打ち続ける事は(血管が潰れてしまう等のため)できません。
また、体にとって異物である抗がん剤は、投与を繰り返すうちに耐性ができてしまい、効果が出なくなる事があります。
それらの理由によって、長い目で見た将来的に使える抗がん剤がなくなってしまうという場合もあります。
そして、抗がん剤の投与中は毎日ステロイド剤の投与が必要とされるのですが、これは、体に対する抗がん剤の負担を軽くするために絶対に必要な投薬です。
我々人間の医療でも、ステロイドの副作用が問題視される事は多々ありますが、この場合、抗がん剤の副作用や、リンパ腫のほうが緊急性を要しますので、副作用が出た場合でも、ステロイド剤の投与を中止する事はせず、その症状によって新たな薬で対処療法を行うこととなります。
これはインスリノーマの投薬時と全く同じお話しとなりますので、ステロイド剤の副作用につきましてはこちら『投薬治療(ステロイド剤)の副作用は?』で、ご確認頂けたらと思います。
このようにして、抗がん剤治療というのは、色々なアプローチがあるとともに、それによってのリスクなど、実に多くの「その子によって」「その時によって」「その病院によって」があります。
同じ診断名がついたからといって「他の子の場合」はまったく参考にならない事の方が多いですので、絶対に、少ない情報で勝手に決めつけてはいけません。
この「抗がん剤治療」については
その効果が十分に発揮され、なおかつ体への負担が出来るだけ最小限になるように、と、いろいろな種類の抗がん剤を、どの順番で、どの量で、どの方法で投与するのが良いのか日々、色々な研究がされています。
必ず、先生のお話しを聞いて下さい。
十分に説明を受け、全てに納得した上で治療を始めたとしても、途中で不安になったり分からない事や疑問に思う事があれば、その都度、理解できるまで何度でも質問を「先生に」して下さいね。
「完治」は無いけれど
寛解の後、再燃せず一生を穏やかに過ごしたというフェレットを私は実際に何ニョロか知っています。
ただ、現実的なお話しとして、治療費はそれなりに高額となります。
治療方法や治療費などは獣医さんにとことん相談して、納得できるまでその説明をしてもらって下さい。
必要であればセカオピでも転院でも何でも出来ることは全部してあげて欲しいと思います。
SNSなどで「他の子のお話し」を聞くのはこのタイミングが一番、精神衛生的に良いんじゃないかと思います。
まとめ
「リンパ腫です」と診断を受けてすぐには、どうしたって不安や諸々で誰かに胸の内を吐露したくなります。
それは悪い事ではないし、どんどん言って少しでも楽になった方が良いです。
ただ、その時に、吐き出す代わりにと、あまりにも多くの情報を一気に頭に入れようとしては、あなたが潰れてしまいます。
1つ1つ丁寧に、今、目の前のその子の体に起きている事とどう向き合うかを、その都度その都度、一番に考えてあげるという事を決して忘れないで下さいね。
「他の子の場合は?」を情報として頭に入れる時には、まず一度、自身の頭の中をきちんと整理して、少しずつ気持ちを落ち着けてからゆっくりゆっくり…
今日のお話しは、『いたちのおうち:フェレット【わさびの療養記録7日目の画像】リンパ腫とは?その症状や治療法』等からまとめた内容となりますが、どなたかの、その「頭の中を整理する」の少しでもお役に立てたら良いなと思いながら締めさせて頂きます。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡