腎臓には体に不必要となった老廃物を、尿として排泄するほか、血液を作ったり、体液のバランスを保つ機能があります。
腎臓が悪くなると毒素が溜まり、食欲低下、嘔吐、貧血尿毒症による脳障害などさまざまな障害が現われます。
腎臓病が進行して腎臓の働きが弱くなると腎不全といわれる状態になります。
腎不全には、急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数ヶ月から数十年の長い年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる慢性腎不全があります。
フェレットはシニア期(4才くらいから)に入ると一気に病気が増えます。
「腎臓病」「腎不全」も、その1つです。
この子たちの寿命から考えて、数十年の年月をかけて進行するという事はありませんが、「急性」と「慢性」はあります。
ですが、フェレットの腎不全はそのほとんどが「慢性腎不全」であり、それは、人間の場合と同じように
一度、失われた腎機能の回復は見込めない
とされています。
早期に発見してあげられれば、早く治療を開始してあげられるので、その分だけ延命が可能になるとは言われていますが、早期発見自体がかなり難しいとも言われています。
ただし、そのまま放置をしたら、100%必ず死に至る病気です。
いつからでも、「気付いた時点で即座」に治療を開始してあげなければいけない病気の1つで、うちのわさび君は「腎不全」です。
今日のアイキャッチ画像は腎不全だと診断される直前のワサビです。
もちろん、投薬前なわけですが「見た目」では、病気をしている事なんて全く分かりません。
腎不全と一言で言っても、その原因や症状は色々ありますので、うちのわさび君の事も例にあげて、今日はお話しさせて頂こうと思います。
腎臓疾患(腎臓病・腎不全)とは?
腎臓病と腎不全について
腎臓病は、腎臓の糸球体や尿細管が冒されることで、腎臓の働きが悪くなる病気です。 腎臓病にはさまざまな種類があり、それぞれの原因や症状も異なります。 腎臓の機能はいちど失われると、回復することがない場合が多く慢性腎不全といわれる病態になります(急性腎不全の場合は機能が回復することもあります)。
フェレットの場合でも、脱水症状が原因で引き起こされた「急性腎不全」で、その後にその機能が回復したという症例があります。
腎臓に疾患がある時の値(目安)
腎機能を表す項目は複数ありますが、有名どころは「CRE(クレアチニン)」と呼ばれるそれだと思います。
クレアチニンとは、体内でたんぱく質が使われた後の老廃物の事
クレアチニンは血液を介して腎臓の糸球体でろ過された後、尿中に排泄されるものなので、腎機能の障害や尿路結石(尿石症)などにより、それが排泄されなければ、この値(CRE)は単純に必然として高くなります。
尿路結石(尿石症)については
そして、このクレアチニンというのは、尿以外では体の外へ排出されないので、腎臓の働きが悪くなっていたり、尿が作れないような状態になると、そのクレアチニン(要するに老廃物)がドンドン体内に溜まっていってしまい、
すぐに尿毒症を起こし、そのままでは確実に死んでしまいます。
こちらをご覧下さい
ワサビのクレアチニンの値は正常値の範囲です。
ですが、その1つ上の「尿素窒素」の値が異常に高いです。
尿素窒素(BUN)とは?
BUN(尿素窒素)とは血清成分からタンパク質を取り除いた残りの残余窒素の30~40%を占める成分の事です。
生命活動のエネルギーとして使われたタンパク質の燃えかすとして生じるアンモニアを無害化するために、二酸化炭素と結びついた結果できるものです。
通常、尿素窒素は腎臓でろ過されて尿中へ排出されますが、急性や慢性の腎不全などで腎臓の働きが低下すると、ろ過しきれない分が血液中に残ってしまい、尿素窒素の値が高くなります。
人間の場合でいうと、タンパク質の取りすぎ、大量の消化管出血、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、脱水症状の場合も数値は上昇します。逆に数値が低い場合、タンパクの摂取不足が考えられます。
その他、尿素のほとんどすべてをつくっている肝臓の働きが悪い場合、すなわち重症肝障害、肝不全などでも数値は低くなります。
この子達(フェレット)の場合、そのほとんどが、尿素窒素BUNを表す数値が高い場合は「腎臓が悪い」、逆に低い場合は「肝不全」や「飢餓状態」を真っ先に疑います。
腎臓病の原因とされるもの
- 蛋白質(卵の与えすぎなど)
- 塩分とカルシウムの多い食事
- 水道水中に含まれる塩素類
などが、腎臓や肝臓に負担をかけると言われています。
私は別に手作りフード推奨派ではありませんが、否定派でもありません。
また、市販のカリカリフードについても基本的にはそんなに神経質に厳選している飼い主でもありません。
ただ、「そう言われている」事が気になるようでしたら、フードを手作りされる時やまた購入される時には、そういう成分を少し気にしてあげてみてはいかがかなって思います。
「フェレットの腎臓病は市販のカリカリフードが原因だ!」とか言ってる方もいらっしゃいますし、こちらでは「一般的に理想とされる数値」を書き出してみました。
⇒フェレットフード理想とされる成分表示とチェックしてあげて欲しい点
よろしかったら参考にして頂けたらと思います。
また、
- 歯周病
も心臓病や腎臓病の原因としてあげられる物の1つです。
飲料水は浄水器のお水を使用していますが、フードの事やその他いろいろと「もしかしたら原因はこれかも」と思い当たる事はありますが、こういう事は、「個体差」でしかなかったりもします。
同じように同じ環境で飼育していても、皆が同じ病気になるわけでは無いし、また逆に100%防いであげらるなんて事もありません。
ただ、ワサビは歯周病はずっとありました…
でも、ワサビの腎臓が悪くなっている事に気付けたのは、その口腔内トラブルのお陰だったりもするので…
その詳細はこちらなど
⇒腎不全・インスリノーマと診断されたワサビ!病気発覚のきっかけは歯!
腎臓病(腎不全)の症状
フェレットの腎臓病は「罹患しやすい疾病の1つ」と言われているのに、腎臓病としての症状はなかなか出てこないので、某かの症状が出て「気付いた時には手遅れ」または「すでに腎不全」という場合がとても多いです。
腎臓というのは3/4くらいの機能が低下しないと症状が出てこないといわれる沈黙の臓器です。
「おかしい」と気付いてからの来院で、腎不全の診断がおり、即入院した4日後に亡くなってしまったという症例を知っています。
冒頭でも述べた通り、一度失った機能が回復する事は医学的には「ほぼ無い」とされています。
「1/4しか機能しなくなってから初めて分かる、そこから回復する事はない。」
だから、腎臓病は「気付いた時には手遅れ」の場合が多いと言われているのです。
「亡くなった子を調べたら、腎不全だった」が多かったりする怖い病気ですし、完治は無いとされているので、運が良くて「一生涯に渡っての投薬(治療)」となります。
早期発見には「きちんとした腎臓の検査」しか無いのですが、その検査だけを健康な時にする事はあまりありません。
だから、ワサビのように、他の病気の検査から「腎不全が発覚する」事も多いですので、そういう時は「○○(病気)なのに、更に腎不全にもなっちゃった」と考えないであげて欲しいと思います。
「○○(病気)のお陰で腎不全も分かって良かった」って、早期に治療を開始してあげられる事を喜ぶべきだとさえ、私は思っています。
少なくても私たちは、ワサビに対してそういう気持ちで「闘病頑張ろうね」って言っているので、可哀想がって泣いてる時間はありませんでした。
なぜならですね…
一般的に言われている症状
- 多飲 尿量が多い
- 食欲低下
- 嘔吐
- 貧血
- 腎臓に水がたまる
- 尿毒症による脳障害
- 体を触られたくない
- 背中を触ると痛がる
- 肥大した腎臓
- 極度の脱水症状
- 栄養失調
- 呼吸困難
これらがよく言われている「腎臓病(腎不全)の症状」ではありますが、このうち1つも、当てはまる症状は出ていませんでした。
数値だけみたら、完全に「腎不全」の値を示しているのに、何も無かったのです。
病気が分かってから、無理やり当てはめて考えようと思えば、「他の子に比べてお水を飲む回数が多かったかな」くらいしかありません。
それはやっぱり、
「症状が出て(手遅れになって)から気付くより、良かった」って思って良い事なんだと思います。
強いて言えばの症状
これも「後から思えば」でしか無いのですが、体臭がおしっこのニオイになっていたような気がします。
前夜にお風呂に入ったはずのわさび君から翌日にはもう「おしっこのニオイ」がしていました。
これは、気付かない人には「全く分からなかった」と言われたし、最近、フリーダムウンチっぷりに拍車がかかっていたわさび君なので、いた家スタッフの間では、「7才だし、ちょっと漏れちゃってるのかもね」って話しをしていた程度なので、あまり参考にはならないかもしれませんけど。
腎臓は、心臓から送り込まれてきた大量の血液をろ過して、毒素や老廃物を尿として体の外に排泄する働きをしています。このため、腎臓の機能が低下して尿が出にくくなると、毒素や老廃物が排泄されなくなり、体の中に溜まってしまいます。 すると、血液中の毒素の濃度も高くなり、その一部が汗と共に分泌されるため、体臭がおしっこのような臭いになってしまうのです。
メンズスキンケア大学「体臭が原因で考えられる病気(4)腎臓疾患」
まぁ、あながち「無いわけでも無い」お話しとして参考にして頂けたらと思います。
腹水が溜まってた
腹水というのは、口から飲んだお水がそのまま胃や腸からこぼれているわけでは無くて、「体液」が漏れ出してお腹の中に溜まってしまっている事を意味します。
何かしらの原因で、静脈の圧があがって、血液中の水分が血管の外ににじみ出てしまっている状態なのです。
その腹水はレントゲンでは白く、エコーでは黒く写ります。
こちらは、上記の検査データが出た日のワサビのお腹の中のエコー写真です。
上部の黒い逆三角形が溜まった腹水
100~150mlくらい溜まっているんじゃないかと言われました。
腹水は、フィラリア症の末期的な症状だったり、癌やリンパ腫、心筋症などの心臓疾患、その他の多くの病気で見られますが、もちろん、ワサビの場合は「腎臓」のそれからこの症状が出ているのだと思われます。
腹水の処置としては、一般的に
- 利尿剤で、体の水分の排出を促す
- お腹に針をさして水を抜く
この2つがありますが、この時の私たちは、早急にどうにかしてあげる事よりも、まずは、「ワサビの体が自分で自然排泄(できる事)にかけてみよう」と考え、利尿剤での処置を選びました。
その結果、
「若干」にまで減りました
倍率や写し方が違うので、分かりづらいかもしれませんが、「少なすぎて抽出処置は出来ない」と言われるくらいまで減っていました。
ワサビの体が私たちの期待に応えてくれている証拠です!
ですが、
「腎臓の機能低下」によって(とされる)溜まった腹水。
それが減ってきたからといって「=腎臓の機能が回復した」という訳ではありません。
上記で述べたように、
老廃物を体から排泄するためのオシッコを作るという大切な仕事を担っているのが腎臓です。
その機能が十分でなければ、体内に老廃物が溜まってしまい、すぐに尿毒症になってしまいます。
尿毒症は死に直結する事がある非常に怖い症状です。
だから、ワサビは、この時からずっとお薬を飲んでいます。
腎臓疾患の薬とは?
「腎臓疾患」と一言でいっても、その症状は様々です。
また「腎不全」という病気の名前は同じでも、「その子に必要なお薬」は、皆それぞれ、獣医さんの考えによっても違ってきたりするものなのです。
だから、これ以下は「今のわさび君に合わせて処方してもらっている腎臓のお薬でしか無い」として、お読み下さい。
たった1つの病名が被ったというだけで、どの子も皆が「まったく同じ治療をする」なんて事はありえない事ですからね。
そして、上記でも述べたように、腎臓を治すお薬はありません。(腎不全を治す特効薬はありません)
少しでも慢性腎不全の進行を遅らせてあげる事と、合併症を予防する為のお薬になります。
吸着剤
腸の中で色々な物質を吸着して体外へと一緒に排出してくれるお薬です。
ご飯の栄養分や他のお薬の成分も吸着してしまうので、飲ませる時間には気を付けなければいけないお薬です。
ワサビは「リン」の数値が特に高いです
(人間でも、高リン血症になると、低カルシウム血症、副甲状腺ホルモンの過剰分泌(副甲状腺機能亢進症)をきたす恐れがある事で知られています。)
だから、食物中のリンと結合し、そのまま吸収されないようにするリン吸着薬がメインです。
食事中のリンと胃の中で結合させるために、食中または食後すぐに服用させています。
※カリウム吸着薬がメインの吸着剤とは飲ませ方が異なる場合があります
降圧剤
腎臓が悪くなると体内の水分や電解質などが増えて、身体の中を循環する血液量が増えてしまいます=血圧が上がる。
高血圧は、腎不全進行の最も重要な増悪因子であるとも言われており、生命にかかわる合併症の原因にもなります。
血圧が上がるという事はそれだけ、腎臓への負担が増えるという事にもなります。
だから、それらを防ぐために降圧剤で血圧を下げてあげています。
造血剤
腎臓ではエリスロポエチンと呼ばれる造血ホルモンも産生しているのですが、腎不全になれば当然、この造血ホルモンの生産機能も低下します。
このエリスロポエチンが骨髄に赤血球を作るように指令を出しているのですが、それが欠乏するわけですから、骨髄での赤血球の産生(造血)が低下して、貧血になってしまいます。
貧血の状態が長く続くと、それが心臓の負担となるので、心不全の原因となりかねません。
※ここで言う「貧血」とは、我々、人間でいうところの「フラッとする貧血(脳貧血)」とは全くの別物で、いわゆる医学的用語で指す「身体中に酸素を運ぶ赤血球が少なくなること(貧血)」を言っています。
抗生剤
抗生物質の仕組みについてはこちら(抗生剤とは?)でご確認いただければと思いますが、きちんと処方して頂いています。
まとめ
今日のお話しの詳細その他は
などでも、ご確認頂けます。
繰り返しになりますが、
腎不全というのは、放っておくと必ず死に至る怖い病気ではありますが、きちんと正しい知識を持って、適切な治療を続けてあげてさえいれば、恐れたり悲しんだりするような病気では無いのです。
治る事は無くてもしてあげられる事はたくさんあります。
どうか、その子との時間を少しでも長く続けられるように
一日一日を精一杯、楽しく過ごせるよう、あなたが笑ってお世話をしてあげていって下さいね。
追記:わさびの闘病生活は幕を閉じました
2018年6月25日 (月) にわさびは虹の橋へ向かって旅立ちました。
約半年は完全に「闘病中」ではありましたが、最後の最後まで本当に穏やかな毎日でした。
亡くなる前、最後に病院へ行った時のお話しはこちらになります。
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末期の腎不全【フェレットわさび】尿毒症とは?けいれん薬(抗てんかん薬)を今処方された意味
色んな皆さんからお写真をお借りしたりして、書きかけの記事が何個かあるのですけれど、 今日はわさびのお話しを… わさび君は腎不全・インスリノーマで闘病中の8歳(シニア)です。 わさびの腎不全お話し⇒フェ
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健やかなニョロニョロ生活を☆彡