はじめに…
今日のアイキャッチ画像は、うちのワサビ君です。
犬歯の欠損はありましたが、歯髄炎の症状はなく、気付いた時には歯根膿瘍で、一度は治まったその症状と再び同じ症状が出た時には、下顎の骨が折れた状態になっていました。
その当時のあれこれや葛藤が「いたちのおうち」のアッチコッチの記事に散らばって書かれていて、「非常に分かりづらい」とお叱りを受けたので、
こちらできちんと病状についてのみを分かりやすく書き直させて頂きます。
ちなみに、ワサビは今、元気です。
症状は綺麗に治まっています。
そんなこんなな事情なども含め、どなたかの参考にして頂ければ良いなってワサビも思っていると思います。
口腔内トラブルは外から見て分かる大きな症状が出ないと気付きにくい
ワサビの犬歯が欠損していた事は最初から分かっていました。
一番最初の健康診断から「歯髄炎にならないように気を付けてあげよう」って皆で本当にそれだけは気を付けているつもりでした。
参考:歯髄が露出した犬歯
歯髄炎とは?
歯の中心部にある、神経や血管が通っている部分を歯髄と言います。
- 歯が折れる・欠ける
- 摩耗(まもう:なにかで機械的にこすられてすり減る事)
- 咬耗(こうもう:ものを食べたり、何かをかじったりする時に、歯同士がこすれてすり減る事)
などして、歯髄が露出して炎症を起こす病気が歯髄炎です。
「歯髄が露出する」を我々人間の例で分かりやすく表現すると、「虫歯やその治療で麻酔も無しに歯の神経をどうにかされてる状態」とお考え下さい。
当たり前ですが、強い痛みがあります。
そして、フェレットの歯にはわりと先端の方までその歯髄が通っているのです。
歯がそうならない為には
こんなに小さな細い歯ですから、不自然な力が加わればポキっと折れやすいのは当たり前に分かります。
その上、犬歯というのは口の外に出ていますから、外部からの衝撃にあいやすいのです。
ケージの金網など硬い物をかじって折れたり、
高い所から落下して顔面を打って折れてしまうなどして、
「犬歯が折れてしまった症例」の原因はたくさん聞きますが、それは「犬歯が一番折れやすい」というだけで、当然、他の歯だって折れてしまえば、それは歯髄炎の原因になり得ます。
どの歯も折れてしまわないように、くれぐれも気を付けてあげて下さいね。
気を付けてあげるポイント
オモチャをかじって遊ぶことは歯垢を落としたりストレスの発散にもなるので、それ自体はとても良い事ではあるのですが、
あまりにも硬すぎるオモチャを使い続けていると、その場でポキっと折れたりはしなくても、時間をかけて歯が咬耗していき、気が付いたら歯髄が露出してしまっていたなんて事になりかねません。
ペット用のオモチャ以外の物や、ペット用でも顎の強い大型犬用のオモチャなどでは、なるべく遊ばせない方が良いんじゃないかと思います。
歯髄炎の症状
見た目では
- 歯(とくに犬歯)の先端が欠けている
- 歯が(こすれて)短くなったように見える
- 歯が黒っぽく変色している
などが分かりやすい症状にあります。
歯髄が露出していなければ「痛み」の症状は出ません。
これらの症状が出ていたとしても炎症を起こしていなければ歯髄炎とは言いません。
ただの「歯の欠損」「歯のトラブル」です。
それ以上、欠損が進まないよう、炎症を起こさないよう定期健診などでもそこを注意深く診てもらうなどして、くれぐれも気を付けてあげて下さいね。
そして、
- 硬い物を食べようとしない
- 口元を触ろうとすると嫌がる
- かじるオモチャで遊ばない
これが、分かりやすい歯髄炎の症状です。
このような時には、歯髄が炎症を起こし、痛みが出ている可能性があります。
すぐに病院へ連れて行ってあげて下さいね。
歯髄炎の治療
歯髄が露出してからの期間やその状態によって、歯髄を残すように修復するか、歯髄を取り除いて治療をします。
これは、歯髄に詰め物をして歯を温存するという人間と同じような治療方法なのですが、「この治療を受けた」というお話しは実際にそこまで多くは聞いた事がありません。
それよりも、消炎剤や抗生物質の投与で「このまま様子を見ていきましょう」が一般的かと思います。
もちろん、症状が進んでいたり、その子の年齢や体力、飼育環境などを考慮したうえでの話しになれば、「抜歯」を視野にいれた投薬が次に多い治療のように感じます。
ここまでのお話しの詳細は
などでも、ご確認頂けます。
そして、ワサビは歯髄炎を起こしている様子は一度も見られませんでした。
ある日、気が付いたら、写真のようにボッコリと腫れていたのです。
歯根膿瘍とは?
歯髄炎の悪化で歯髄が壊死したり、ぶつけたり、虫歯、などの影響や、何らかの原因で歯根部に炎症が波及すると歯根膿瘍になります。
「膿瘍」とは化膿して膿がたまることです。
ワサビのように下顎が腫れている場合は下の歯の根に膿瘍が出来ているという事になりますが、これが上の歯の歯根の場合には目の下やホッペタが腫れます。
進行すると、痛みでものを食べられなくなるだけでなく、皮膚が裂けて排膿して(膿が出て)くる場合もあります。
こうして、下側から見るとボッコリと腫れているのも血が滲んでいるのも分かりますが、私たちはこれより早くに気が付いてあげる事は出来ませんでした。
歯に欠損がある事で、歯髄炎の心配はずっとしていました。
でも、食べるご飯の量はずっと変わらず、ウンチもプリプリ、もともと噛むオモチャで遊ぶ事が少ない子だという事はありましたが、歯髄炎の症状である「痛そうな素振りを見せない」事に安心しきっていたのです。
だから、ある日、突然、こんなに腫れている事に気が付いて慌てたのです。
フェレットの顔が大きく腫れる原因が「口腔内腫瘍」である場合もあります。
口腔内の腫瘍とは
消化管に最も多くみられる腫瘍は悪性リンパ腫です。小腸に最も多く、次いで胃、肝臓、結腸、口腔などとなります。消化管のリンパ節は消化吸収に影響することも加わり、予後不良です。確定診断には消化管の生検が必要なため、実際に診断されていない例も多く、報告されているよりもはるかに発症例は多いものと思われます。
消化器の腫瘍は腫大硬結することが多いため、その結果として閉塞を生じます。また、消化管の原発性腫瘍は悪性度が強く、侵襲性も高いために局所では周囲への浸潤、リンパ節転移を生じやすい特徴があります。そのため触診、レントゲン検査、超音波診断などによって、診断は比較的容易です。転移が見られない場合には腫瘤の切除を行いますが、そのような場合でも予後は良くありません。それらの特徴を踏まえて、治療方針は検討されるべきかと思います。
口腔内の腫瘍を見ることもあります。平滑筋肉腫が最も多く報告されていますが、悪性度が高く、顎骨への浸潤を起こすことも多く、予後は不良とされます。ごく早期であれば外科的な切除を考慮することもできますが、放射線治療や化学療法が必要となります。その他にも口腔内の悪性腫瘍の報告がありますが、いずれも予後不良とされています。
詳しくは「フェレットの口腔内の腫瘍とは?」
歯根膿瘍の治療とは?
抗生剤の投与だけで綺麗に治ってしまう事もありますが、状況によっては、人工的に穴を開けたりして、綺麗に排膿させて洗浄してから抗生剤の投与という事もあります。
根本的な原因の治療も兼ねて、炎症を抑えるお薬の投与で、ある程度の腫れがひいたら抜歯をして排膿を促してあげるという治療方法もあります。
いずれにしても「投薬→状況に応じて排膿(穴を開けるか原因の歯の抜歯など)→投薬」という感じです。
そして、この投薬には
(体質的にその薬が合う合わないはもちろんありますが)、「投薬の効果が出ない場合は口腔内腫瘍とする」という一種の検査みたいな役割も含まれていたりします。
腫瘍には抗生剤は効果がありませんからね。
この時のワサビも、一回の注射で2週間効果があるとされる持続型抗生剤「コンベニア」を投薬してもらいました。
その2週間は全員でずっと祈るような気持ちで過ごしました。
ら、2週間もかからずに腫れはすっかり引いて、先生に「薬が効き過ぎてるんじゃないかってくらい綺麗に治ってる」って言ってもらって、全員で泣きました。
この時に、原因となった歯の抜歯をお願いしていれば、その後はまた違っていたのだとは思います。
でも、歯髄炎を起こしているわけでも無く、ちゃんとご飯が食べられるなら、「できるだけ歯は残しておいてあげたい」が私たちが出した答えです。
それまで1年に一度だった定期健診を半年に一度に切り替えた矢先、「そろそろ検診に行こうか」って、話しをしていたまさにその時に、ワサビの顔がまた腫れました。
アゴの骨がボロボロになってた
上載の写真と見比べて頂くとお分かり頂けるかと思いますが
前回のように顎全体がボンヤリと腫れ上がっているのでは無く、一か所だけが大きくポッコリと腫れているのは「骨がパキっと折れた為ではないか」というのが獣医さんの見解です。
※正確には、パキっと折れたのでは無く、溶けてもろくなっていた部分のうちの「一か所が強く炎症を起こし始めた状態」という事です。これ以下も便宜上このまま「折れた(骨折)」という表現で続けます。
もちろん、そこが盛り上がっているから目立つというだけで、前回同様、左側の下顎全体に炎症が広がっているのには違い無いので、うっすらとは腫れています。
本来あるはずの下顎の骨が溶けて薄くなって、一か所が繋がっていないような状態なのがお分かり頂けますでしょうか?
この時は、本当に一晩でボコっと急に腫れました。
いや…数日前から「また少し腫れ始めてないか?」って気になってはいたので、本来であればその2ヶ月後に行くはずだった病院を「少し早めよう」って話し合っていた時でした。
「来週にでも診てもらいに行こう」って決めた翌日に、こんな風に一か所だけが盛り上がるように丸く腫れていたのです。
骨折の理由
前回の時…いやもっと前から、外側からは見えていない部分の炎症が起きていたのかもしれません。
レントゲン写真で分かるように「左側の下顎は骨が溶けてペラペラ(ほとんど無い)状態」です。
炎症を起こしているのが「7歳のフェレット」という条件が重なったのが、その原因では無いかと言われました。
この状態にまでなっていたらもう、ぶつけたとかでは無くて「何かの拍子(ご飯を食べてる最中など)にパキっとはあり得る事」だそうです。
炎症云々がもちろん一番ではありますが「加齢により骨自体がもろくなっているのは否めません」との事でした。
もちろん、元々の体質によるものもあるのでしょう。
同じ年齢で虹の橋を渡ったニョロリンが火葬の後にも「歯はしっかり残っていた」ってお話しを聞く事があります。
こういう事は
「そういう子もいる」
「皆それぞれ」
です。
これは「ワサビはそうだ」というだけのお話しですからね。
そして、その「ワサビについてのそもそもの炎症」の原因は分かりません。
ワサビには当てはまらないかもしれないのですが、こういった場合考えられる原因の1つに歯槽膿漏があります。
フェレットの歯槽膿漏についてはこちら
で、ご確認下さい。
特徴の1つである「口臭」はワサビにはありませんでした。
でも、ワサビのお口の中は素人の私が見ても「トラブルが起きてる」事が分かる状態でした。
普段から、歯茎は他の子に比べたら少し赤かったような気がします。
参考:歯肉炎で赤く腫れた歯茎
この時はもうこの写真のように熟れたトマトのように真っ赤で、外からのちょっとした刺激で歯茎から血がにじみ出てくるような状態でした。
カサブタのように見える血は、腫れに犬歯があったっているからなどの外傷では無く、そうして口の中から出た血がここで固まっているのです。
拭いてあげたくても、それがまた刺激になって血が出てしまうので、しばらくはずっとこんな状態でした…
骨折の治療はしない(できない)
骨自体がこのような状態では治療も何も出来ません。
というより、このような状態では無かったとしても、下顎骨の骨折で積極的な治療というのは小動物ではあまり行いません。
歯槽膿漏などお口のトラブルが多いニャンコスなどでもそうなのですが、この子達の場合も歯や下顎の骨が無かったとしても、食事は出来るのです。
生活への支障はさほど無いのに受けるその大きな手術や長引く通院の方がよっぽど、体の負担になってしまうのです。
だから、その治療はしないのですが、今度は、腫れが引き次第、抜歯をお願いしようと決めました。
だからした事(治療内容)
とにもかくにも、まずは腫れ(炎症)を抑えてあげるための抗生剤の投与はもちろんではありますが、何よりもまずは「痛い」のを無くしてあげて欲しかったので、
「メタカムシロップ」(炎症緩和・鎮痛)を処方して頂きました。
お陰様で、この時も2週間後の通院までには、腫れは完全にひき、お顔は元のダンディ☆ワサビに戻りました。
が、抜歯の手術をするための精密な検査で、ワサビは大きな手術には耐えられない体だという事が分かりました。
ので、歯はそのままです。
また炎症を起こしたらその度に、お薬で炎症を抑えていってあげる(対処療法)で、この病気とはずっと付き合っていく事になりました。
今日のお話しは「より深刻な症状」でのお話ししかしていませんが、「歯周病」というのはこの子達にも最近増えてきている病気の1つです。
単なる「お口の中のトラブル」などと軽く考えて、長時間放置していると、歯が抜けてしまったり、腎臓病や心臓病の原因にもなりかねない病気の1つなのですよ。
現在、わさびは腎不全で闘病中です
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腎臓には体に不必要となった老廃物を、尿として排泄するほか、血液を作ったり、体液のバランスを保つ機能があります。 腎臓が悪くなると毒素が溜まり、食欲低下、嘔吐、貧血尿毒症による脳障害などさまざまな障害が ...
定期健診は欠かさず受けさせてあげて下さいね。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡