フィラリア症とはざっくり言うと「蚊が媒介してフィラリアという虫が動物に寄生する事によって起きる病気」のことです。
フィラリアにも種類があり、「リンパ系フィラリア」は、感染するとリンパ系に大きなダメージを与え、足が象のように大きく腫れる象皮病などの身体障害を発症することがあります。
リンパ系フィラリア症は熱帯・亜熱帯の47カ国で蔓延していて、世界で「5100万人が感染、8.6億人が感染のリスクにさらされている」と推定されているそうです(ファイザー製薬より)
日本では1970年代に根絶されていますが、それまでは全国に分布していました。
現在、日本国内で報告されているフィラリア症は、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)によるディロフィラリア症の方です。
犬糸状虫が人間に感染する事もありますが、人の体内ではそのライフサイクルが完了できずあまり長く生きていることがないので、人に症状がでることはほとんどありません。
※肺に移動した寄生虫がそこで死んだ場合、「咳や胸痛がみられることがある」そうなので、何かあったら病院へ行って下さいね。
私には人のことは分からないので、ここからは、この子達のお話。
フェレットが犬糸状虫症(ディロフィラリア症)にになると致死率はほぼ100%と言われています。
これ以降「フィラリア症」の表記は全てこのディロフィラリア症のことですので、そのようによろしくお願いします。
この子達のフィラリア症を防ぐ唯一の方法は予防薬を投与することです。
フィラリア症の予防薬というのは、ワクチンのように抗体を持たせるものでは無く、また、蚊を避けるような虫よけ効果があるものでもありません。
フィラリア症の「発症」を予防するためのものです。
「予防薬」はあくまでも予防の為に投与するもので、「薬」には、もちろん副作用があります。
フィラリア症の予防薬というのは体内の虫を「殺す」薬です。
正しい投薬でもその副作用に死亡症例があるお薬です。
誤った投薬方法で多臓器不全で亡くなった例もあります。
ネットで安く購入できるからと言って、勝手な投薬は絶対にしてはいけません。
投薬は獣医さんの指示に従って、必ず正しく行ってあげて下さいね。
フィラリア症について
- フィラリアに感染している動物の血中には、フィラリアの子虫(体長約300μm(ミクロフィラリアたる所以)の第1期子虫)が循環しています。
- 循環しながら、吸血されやすい時間(蚊の活動時間※)になると、吸血されやすい抹消血管に移動したりしてるのです。※イエカは夜、やぶ蚊は昼←これ豆知識
- まんまと血液と一緒に蚊の体内に入り込んだミクロフィラリアは、約2週間のうちに2回も脱皮して(1回目の脱皮で第2期子虫)感染能力を持つ感染幼虫(第3期子虫)に成長します。
- 体内にフィラリアの幼虫がいる蚊が他の動物を吸血する時、逆にその幼虫は蚊の体内から出て行き、その吸血されている動物の体内に侵入するのです。
- 小さな蚊の体内から大きな動物へと移り住んだ幼虫は、今度はその動物の皮下や筋肉内で成長を続けます。約2週間ほどで第4期子虫に、2ヶ月で第5期子虫に成長します。
- そこから心臓や肺動脈に移動して成虫になり、感染後約6カ月で性成熟して上記の大きさになり、ミクロフィラリアを放出するようになります。
- ミクロフィラリアは…上に戻ってエンドレスリピート
フィラリアの成虫は心臓の前大静脈、右心室、肺動脈に寄生して、うっ血性心不全(ポンプとしての心臓の働きが低下すること)を起こさせたりします。
フィラリア症の症状
はっきりした症状がないままの事もあるそうですが、上記の「6.」後半になると
- 元気がない
- 疲れてダルそう
- 咳をする
- 嘔吐
- 息苦しそう
- 食欲がない
- 体重が減る
等などがみられるようになります。
息苦しそうな時にはもう腹水や胸水がたまっていたり、聴診すると心臓の雑音があるそうです。
症状が出てからでは間に合わなくなってしまう場合が多いです。
だから、
「フィラリア症は早期からの治療が困難」=「フィラリア症の致死率はほぼ100%」
と言われているのです。
しっかり予防をしてあげて欲しいと思います。
予防薬の投与の時期
上記のように、フィラリアの子虫は蚊による媒介で動物に寄生します。
今日現在、日本では、蚊がいない地域やフィラリアが発生していないという地域はほとんどありません。
「マンションの最上階に住んでるから蚊の心配はしていません」とおっしゃる方を時々お見掛けする事がありますが、「12階(高さ35m)付近までは蚊の活動範囲である」と、とあるマンションアナリストの方が言っていました。
その詳細もこちらのリンク先にあります
そして蚊の移動手段はエレベーターというお話しもありますので、十分に気を付けてあげて下さいね。
投薬開始時期は地域によって、1~2ヶ月の差がありますので、かかりつけの獣医さんと相談して、きちんとその時期を守ってあげて欲しいと思います。
東京にあるいたちのおうちでは「4月~12月」をその時期としています。
フィラリア症の予防薬の仕組み
現在、日本で処方されている、フェレットにも使えるとされる「フィラリア症の予防薬」は、私が知っているだけでも、
今日のアイキャッチ画像のように飲ませるタイプものから、首の後ろにチョンチョンと付けるタイプのものまで、何種類かありますが、そのどれでもが「フェレットにも使える」というだけのものです。
フェレット専用のフィラリア症の予防薬というものはありません。
そして、それらのお薬は、上記でいうところの
「第4期子虫(下記参照)に対してのみ」効果がある物がそのほとんどです。
月に1回の定期的な投薬で成虫になる前の幼虫を殺し、体の外へ一掃し、フィラリア症の発症を予防するというのがフィラリア症予防薬の仕組みです。
勝手な投薬は、その子を殺すことになりますよ
フィラリアの成虫というのは、オス・メスで多少の違いはありますが、長いものは30cmにもなります。
対して、この子達(フェレット)の心臓は直径約2.5cmしかありません。
その図(白い糸状の虫がフィラリア)
フィラリアが体内で成虫になってしまったら、その子は死んでしまいます。
突然死したフェレットを病理解剖した結果、「フィラリアの成虫が肺動脈を塞いでいた」という症例を知っています。
フィラリアが成虫になる前に殺して外に出さなければいけないのはもちろんではありますが、その前の段階であっても、死んだフィラリアの残骸が血管に詰まってしまったら、この子達も死んでしまいます。
体の中にすでに虫がいる場合、投薬で殺した虫の残骸でその子も死んでしまうという事です。
フィラリアの寄生があるかどうかを調べもせずに、勝手に投薬を始めてはいけません。
検査をするしないで病院を決めるのは間違い
フィラリアに寄生されてるか否かは、抗原検査、血液検査、超音波検査など、その病院によって様々な診断方法がありますが、病院によっては、予防していたか・いないかの問診やその子の症状だけで投薬の判断をする事があります。
一般的な抗原検査にかんしては、もともと犬用のそれが基準であるため、フェレットのように1~2匹程度の寄生でははっきりした結果が出ない事が多いとされているからです。
※フェレットでは1匹の寄生で致死率ほぼ100%に対して、犬の場合は数十匹単位の寄生でも重症じゃなかったりするのです。
そういった事を受けての獣医さんの判断で「ただ詳細な検査をしない」というだけの事なのですが、稀に、その「検査をしないで予防薬を処方する病院がある」という事を受けて、ネットでの購入を促すサイトなどがありますが、
それは間違った誘導ですからね。
もしもすでに寄生されていた場合の早急な処置はもちろんの事、アナフィラキシーや副作用、アレルギー反応が出た場合、その処置が遅くなると死に至る場合も出てきます。
そういう事も含めて、一度は必ず、「その子を診てもらってから」投薬するようにしてあげて下さいね。
今日のお話しの元記事はこちらです。
すっごく詳しく書いたつもりが、その分だけ、ものすっごく長くなってしまったので、お時間あります時に、お読み頂けたらと思います…
健やかなニョロニョロ生活を☆彡