フェレットの脱毛というのは、その多くがお尻(シッポの付け根辺り)から始まり、徐々に全身へ拡がっていくという場合が多いです。
突発的に首の後ろやお腹の毛など、どこか一部の毛が薄くなるような事もありますが、そういう場合は、何かしらの一時的な原因の、その一部おハゲで終わる事が多いです。
また、慢性的な貧血状態にある子や脱水症状を起こしかけている子などは毛並がパサパサしている事があります。
この子達の「毛」というのは、体の中(内臓)の状態やその時の体調を教えてくれたり、時にはSOSのサインだったりする事がありますので、不自然に毛が薄くなったような気がしたり、明らかな脱毛に気が付いた時には、なるべく早めの受診をお勧めします。
たかが脱毛、されど脱毛…
今回のお話しで、
「ネットに出ている画像や何かで勝手にその判断をするなんて事は出来ない」って事を少しでも多くの方に知って頂けたらなって思います。
たったの数枚ぽっちの他の誰かの写真と見比べて、「うちの子は病気じゃない」なんて安易に思い込んで手遅れになってしまうような事が無いように、
「脱毛の仕方で病気が分かる」なんて「参考画像は無い」って事を知っておいて頂きたいと思います。
不自然な脱毛は体が「正常な状態では無い」事を表すサイン
一言で「脱毛」と言っても、その原因には外的な要因と内臓(主にホルモンバランスの乱れ)からのそれがあります。
ある日、突然、気付いたら「はっきりハゲてた」場合は外的要因である場合が多く、また逆に、気付かない間に少しずつ「うっすらと薄くなっていた」ような場合には、内臓からのそれを疑って…
いずれにしても、早めに獣医さんの診断を仰ぐべき「症状が出ている状態」だと、頭に入れておいてあげて下さい。
これより以下、その表記は省きますが
「痒み」の症状が伴うものには全て「ストレス(心因性)の脱毛」は当たり前に含まれているとお考え下さい。
外的要因(接触皮膚炎・皮脂詰まり・皮膚疾患)による脱毛
何かが肌に直接触れたことによって起きる皮膚の炎症を接触皮膚炎といいます。
私たち人間でも掃除用の強い薬品や硫酸などの化学薬品が直接肌に触れると、急激に皮膚に炎症を起こしたりします。
それを刺激性接触皮膚炎といいます。
また化粧品や普通の洗剤、塗料、皮革、金属イオンなどに徐々に反応して炎症を起こす症状のことを、アレルギー性接触皮膚炎といいます。
この、アレルギー性接触皮膚炎の原因が金属である場合がいわゆる「金属アレルギー」と呼ばれるそれです。
この子達が触れられるような場所に強い薬品や洗剤を置いておくなんて飼い主はいないと思いますので、その心配はしていませんが、気を付けてあげて欲しいのが金属と革製品です。
この子達にはフサフサの毛皮があるので、直ちにそうなる事は滅多にありませんが、過去にそういう症状が出た子達のお話しを聞くと、いずれも「そういう状態を招きやすい飼い方」を日常的にされていた事が分かりました。
皮膚炎を起こしやすい飼い方とは?
通気性の悪いお洋服やハーネスの長時間着用は中が蒸れて菌の温床となります。
汗をかかないこの子達でも「蒸れる」んです。
こちらの子、事情があって2週間ほど「つけっぱなし」にしていたそうですが
たすき型のハーネスの形状そのまんま毛が薄くなっているのがお分かり頂けますでしょうか?
表面の毛が擦り切れる程度で良かったですが、これに気付かずそのままにしておくと、皮膚が擦れて擦過傷になったり、かぶれたりする事もありますから、夜眠る時にはお洋服を脱がせてあげたり、お出掛け以外での長時間に渡るハーネスや首輪の着用はなるべくなら避けてあげて下さいね。
そうやって、皮膚が弱っている状態の時に、ハーネスや首輪の金具が直接地肌に触れることで金属かぶれを起こし、金属アレルギーの引き金になってしまう事もありますから、本当に気を付けてあげて欲しいと思います。
皮脂詰まり
「汚れや皮脂が毛穴に詰まり毛穴が化膿するなどの炎症が抜け毛の原因となる事があります。」
これが皮脂詰まりによる脱毛の説明なのですが、これを誤解されている方が時々おられます。
皮脂詰まりは飼い主さんのせいや、飼い方が悪いからそうなるといった類のものではありません。
そういう体質の子であった場合、定期的に適切な頻度でお風呂に入れてあげていても、皮脂詰まりは起こります。
毎日、丁寧に洗顔していてもニキビができやすい人もいれば、多少不潔にしていたって、まったくニキビが出来ない人がいるのと同じです。
そんな誤情報を真に受けてシャンプーの回数を増やすのは逆効果ですよ。
強い洗剤(石鹸やシャンプーなど)で頻繁に洗いすぎてしまうと「余計に皮脂の分泌が過剰になる」というのが、人も動物たちも同じ「体の仕組み」ですからね。
皮脂詰まりによる脱毛もやはり「お尻(シッポの付け根)辺り」によく見られる症状ではありますが、「足の裏から始まる」なんて場合もありますので、その場合には「足の毛が薄く」なります。
耳の後ろ辺りに皮脂詰りを起こせば、当然、その辺りの毛が薄くなりますので、一概に「皮脂詰まりによる脱毛はこれだ!」みたいなお話しは出来ないって事を知っておいて頂けたらなって思います。
ちょっと皮脂詰まりっぽい足の裏
触ると肉球がカサカサしています。
肉球は加齢による乾燥でもカサカサしてきますが、この子はまだ2歳である事から「皮脂詰まりによる乾燥じゃないか」と獣医さんで診断されました。
が、この状態ではまだ何も問題は無く、ご覧の通り足の毛はフサフサですので「余計な事は何もしない方が良い」ともアドバイスをもらっています。
ここから、足の方に脱毛が見られるくらいに拡がり始めたら、その時にまた診てもらいに行きます。
肌荒れを起こした時に、エステに行く人と皮膚科(病院)に行く人がいるのと同じで、この子達の場合にも色々とその対処(してあげたい事)は飼い主さんによって違います。
「自分ならこうする」は、それぞれで良いかとは思いますが、どんな場合においても必ず「専門知識がある人」にお願いするようにしてあげて下さいね。
ノミ・ダニ・真菌などの感染症による皮膚疾患で脱毛
ノミやダニ、真菌(水虫と同じ菌)などの感染で皮膚に炎症を起こして脱毛する事もあるにはあるのですが、その場合の脱毛の原因は主に「痒くてかきむしる事によって」の方が多いように私は思います。
真菌感染
真菌に感染して「痒くて掻き毟って」毛が薄くなってしまった右京くん
真菌感染の場合は抗真菌薬の投与で必ず完治させてあげて下さい。
真菌にも色々種類はありますが、ペット達が感染する一般的な真菌は「皮膚糸状菌症」といい、これは人間にも移ります。
非常に弱い菌なので、健康な状態であればまず感染する事はありませんが、免疫力や抵抗力が落ちている状態で感染すると「ケルスス禿瘡」「たむし」「ぜにたむし」「水虫」「爪水虫」なんて表現される症状が出ます。
飼い主が感染するとその子との間でピンポン感染を繰り返すので、必ず一緒に完治を目指してあげて下さい。
治れば、少しずつ毛も生えてきますし、次の換毛で元のフサフサにちゃんと戻ります。
毛並み云々より何より、痒みは、この子達にとっても非常に強いストレスとなりますので、必ず、適切な処置を早めにしてあげて下さいね。
ノミ・ダニのアレルギー
ノミやダニにちょっと噛まれたくらいでは健康なフェレットは脱毛しません。
ノミに噛まれると、その周りがオレンジ色やピンク色になっているため、毛をかき分けて見たらすぐに分かりますので、特定の一か所だけをあまりにも痒がるようでしたら、念入りにチェックをしてあげて下さい。
ノミやダニの寄生が見られた場合には速やかにノミダニ駆除用のシャンプー(フェレット用)を使うなどしたうえで、皮膚疾患がみらる場合には病院で適切な処置をお願いしてあげて欲しいと思います。
脱毛するのは大抵の場合、ノミダニアレルギーを起こした時です。
ノミアレルギーとは、ノミの唾液などにアレルギー反応を起こしてしまう事を言います。
その場合、皮膚に「噛み跡以外」の発疹が出ています。
真菌同様、激しい痒みが続き、掻き毟って脱毛させてしまうのです。
※アレルギー反応としての脱毛もあります。
こちらの子は、状況からして脱毛の原因は1つでは無さそうでしたが、取り急ぎの投薬として「セフゾン」を処方されました
セフゾンとは
細菌の細胞壁合成を阻害することにより増殖を阻害し抗菌作用を持つお薬です。
感染症の治療に用いるセフェム系の抗生物質です。
通常、呼吸器感染症、皮膚感染症、耳鼻科感染症、尿路感染症など広い範囲の感染症の治療に使用されます。
こんな状態になってしまうまで、様子見をしている飼い主さんはさすがにいないとは思いますが、たかがノミ・ダニだと軽く考えずに、いかなる場合であっても、なるべくなら、すぐに病院へ連れて行き、ノミ・ダニの駆除とともに、痒みや炎症を抑える治療(投薬)を開始してあげて下さい。
その後は定期的にノミの予防薬投与で、アレルギーの予防もしてあげて下さいね。
内的要因(内臓疾患(病気)、副作用、ストレス、その他)による脱毛は発毛不全がほとんど
今日のアイキャッチ画像の侘助くんは副腎腫瘍※に罹患しています。
副腎疾患の場合の脱毛については、正確には脱毛ではなく「発毛不全」です。
それについては、今日あげた「脱毛」のほとんどがそうなのですけどね。
でも、このまま全部まとめて「脱毛」って表現を使いますので、この事だけ頭に入れて頂き、適宜そのように変換して以下もお読みください。
脱毛と発毛不全の違いについて
春と秋に、これから迎える季節に合わせた新しい毛が生えてくるとともに、シーズンオフとなる古い毛が抜けていくのは正常な生理現象です。
呼んで字のごとくそれがいわゆる「換毛」です。
これが、何らかの原因によって「新しい毛が生えてこない」状態が発毛不全です。
新しい毛が生えていないのに古い毛が抜けていくから「脱毛した状態になっている」というだけの事なのです。
もちろん「抜け落ちてしまう」という何らかの異常を示している場合も0ではありませんが、古い毛が抜け落ちること(脱毛すること)自体は「正常な生理現象」です。
要するに、何が言いたいのかっていうと
毛が抜けてしまう(脱毛する)事が某かのサインなのでは無く、
毛が生えてこない(脱毛状態にある)事が「正常な状態では無い事」のサインの場合がある
という風に解釈して頂けると良いんじゃないかと思います。
なので、一過性の脱毛や単なる発毛不全である場合は、次の換毛時期に新しい毛がモサモサ生えてくればそのままフサフサに戻ります。
そして、フェレットの三大疾病の1つである「副腎腫瘍」では、罹患した生体の9割にこの発毛不全が見られると言われています(※その場合は、副腎疾患によってホルモンの異常で発毛が抑制されている状態なので、「単なる発毛不全」とは違います)。
その為、
「シッポの付け根がハゲ始めたら副腎疾患を疑ってすぐに病院へ」はニョロリスト達の合言葉になっています。
※合言葉っていうか、常識的な「基礎知識の1つ」です。
薬の副作用による脱毛
こちらのさーちゃんは、ステロイドの副作用による脱毛です。
ステロイドの副作用についてはこちらで詳しく
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ステロイドは怖くない!フェレットには必要不可欠なことが多いから長く付き合っていくお薬だと知っておこう
時々、「ステロイドに頼らない治療法が知りたい」「なるべくならステロイドは飲ませたくない」というようなお問い合わせがあります。 A. 病院でそのまま先生に相談してください 以上です。 我が家の可愛い可愛
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栄養不良またはストレスと思われる脱毛
副腎疾患を疑われたフェレット
検査の結果は、病気では無く「栄養不良」だと診断されました。
ご飯を与えていないなどの「栄養不足」では無く、「栄養不良」です。
栄養不良とは、粗悪なフード(やオヤツ)に起因する事が多く、「不健康な太り方」が最も多い症状です。
が、この子のように「脱毛が見られる場合」もあります。
この直前の飼育環境を考えると、「かなりストレスがあったんじゃないかな」って思います。
※脱毛の範囲は病気の進行(状態)を示すものではありません
副腎腫瘍の症状としての脱毛は、急激にその範囲が拡がる場合もあれば、ゆっくりと薄毛の範囲が拡がっていく場合もあります。
それは、単なる「個体差」や「その時期(換毛時期かそうじゃないか)の違い」でしかないので、病気のそれの目安にしてはいけません。
急激に薄毛の範囲が拡大するからとって、副腎腫瘍が大きいとは限りません。頭部以外全身に毛がない状態のフェレットでも副腎腫瘍は数ミリしかないという場合も多くあります。さらに、薄毛の範囲の拡大と副腎腫瘍の大きさの増大にも直接的な関連はありません。
⇒くらた動物病院(神奈川県)院長 より
「健康な時からメラトニン(副腎疾患の予防に効果があるとされるサプリメントの一種)を飲ませてたけど、うちの子の予防にはならなかった」って、
「サプリの効果は個体差があるからね!過信しちゃダメだし、人に勧める時はそこをきちんと言わなきゃダメだよ!」って、いつも忠告してくれる友達がいます。
脱毛状態の進行はかなり早かったルイくん
こちらのルイくんのように「一度はツルツルにハゲたけど、換毛で元に戻った(飼い主の発言原文まま)」という副腎腫瘍に罹患していたニョロリンがいました。
検査の結果は「腫瘍が超肥大化してた」そうです。
だから、それは
毛が生えてきたからといって、病気が治ったわけでも、ホルモンバランスが正常に戻ったわけでもなく、病気が進行(腫瘍が巨大化)していく中で、ホルモンの異常が「発毛の抑制をしなくなっただけ」だと考えるべきだと担当獣医さんが言っていたそうです。
上記のように、「脱毛」は異常な状態を示す場合がそのほとんどではありますが、その範囲は病気やその異常の深刻さと比例しているものではありません。
そして、最後に、中にはこんな「脱毛」もあるって例をご紹介させて頂きます。
換毛失敗の例
「換毛失敗」という表現を聞いた事はありませんか?
これは、上記でいうところのいわゆる「単なる(原因不明の)発毛不全」です。
実際に、これまでにいくつか、そういう例を聞いてきました。
こちらは4歳までに2回ほど換毛に失敗しているというベテラン皮脂詰まりボーイのみるく君
ちゃんと次のシーズンには生えてきて元のフサフサシッポに戻って良かった。
みるく君の飼い主さんもそうだったそうですが、初めて薄毛に気付いた時には、どの飼い主さんも大慌てで、ありとあらゆる検査をして、体の異常を調べつくすのですが、「原因は分からず(異常無し)」だったりします。
どうしたもんかとアタフタしているうちに次の換毛時期に入り、何事もなかったかのようにまたフサフサになります。
皆さん、後から「何だったのよぉ」って笑い話としてお話しして下さいます。
もちろん、うちも例に漏れず換毛に失敗した子がいます。
私たちも、何もない事が分かって笑いました。
「脱毛」「発毛不全」というのは、飼い主が勝手にその原因や理由を判断をしてはいけない症状である事には変わりがありませんので、一度は必ず、獣医さんに相談してあげて下さいね。
今日のお話しの詳細その他(元記事)は
⇒フェレットの脱毛【病気?ストレス?】気を付けてあげて欲しいこと
※副腎疾患について
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副腎疾患【フェレットの三大疾病】副腎腫瘍とは?
今日のアイキャッチ画像は「副腎腫瘍予備軍(グレー)」と診断された女の子の外陰部です。 すごく驚きました。 フェレットの三大疾病の1つである「副腎疾患(腫瘍)」 昔は「中~高齢のフェレットによく見られる ...
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