災害時の心構え

MOAI Yui

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災害時【被災地のために】被災してない自分にできる事すべき事

先日、気象庁から国民へ向けて初めて「巨大地震注意(南海トラフ地震情報)」というものが発表されました。(これは、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震を受け、次の巨大地震への備えを呼び掛けるものですが、その後の1週間ほど地殻変動の状況を観測した結果、特段の変化が見られなかったため、無事に終了を迎えました。)

政府や自治体からは、もうずっと前から「今後数十年以内に起きる」と巨大地震の想定は出されており、今回のその南海トラフ巨大地震の想定では、被災者は全国で950万人超との予想で「災害後の生活物資の調達は非常に困難となります。備蓄をはじめとした家庭や個人の日頃の備えが重要になります。最低でも一週間以上分の備えを。」とされてきています。

詳細はこちら、政府広報オンライン「災害時に命を守る一人ひとりの防災対策 」にありますので、一度しっかり目を通しておいて頂くと、より心の準備がしやすくなるのではないかと思います。

今日のお話は、災害時(被災した時)の心得ではなく、災害時「被災していない場所にいるあなた」へ向けたお話です。

大きな災害を目の当たりにして「何かできることはないか」「自分はどうすべきだろうか」と焦ってあれこれ「被災地の方々のために何かしなければ」と気持ちが落ち着かないのは分かります。

ソワソワ落ち着かなくてどうしたら良いのか分からなくなってしまっているあなたに、まずは最初にお伝えします。

「何か」をしようと、その「何か」が分からないうちは、「何もしないをする」事が被災地の方々のためです。

この記事が、そんなあなたの心を落ち着かせるためのお役に立てますよう…大きな災害をいくつか経験してきた年長者としてちょっと語らせて頂こうと思います。

被災していない場所にいる自分がまずすることは何か?

大きな災害時には、まず、ご自身に起きたこととして、被災地の事を考える前に「自分は大丈夫なのか」それを真っ先に考えて下さい。

「被災地のことを思うとそれどころじゃない」は分かります。

分かるからこそ言ってるんです。

理由は後できちんと説明しますから、まずは、ご自身のことを考えて下さい。

  • 汲み置きの水の用意はすぐに出来ましたか?
  • スニーカーはすぐに取り出せましたか?
  • 非常食の賞味期間は大丈夫ですか?
  • 懐中電灯の電池は十分ですか?
  • コンロのガスは足りますか?
  • ペット達のものも詰めた非常時の持ち出しグッズにペット用キャリーを持って避難所まで自力で歩く事は現実的に可能かどうかを確かめた事はありますか?

※非常時の持ち出しバッグに非常食をどっさりと詰め込んで「持てない」と言う方を時々お見掛けしますが、持ち出し用と❝備蓄用❞の非常食は別に考えるものです。

家に置いて備蓄するものと持ち運ぶ非常食はそれぞれ分けて置いておいて下さい。

そういうお話も詳しくさせて頂いていますので、こちらの記事もぜひ合わせてお読みください。

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もう一度、言います。

  • 一週間は救助が来ないことを想定しておいて下さい。
  • その間、各自が自力で持ちこたえられる準備をしておいて下さい。
  • これは、政府の公式見解です。

備えて下さい。備えましょう。

被災地のことを考えるとき

そうしてあなたがご自身のことをきちんと考えている間、国が、政府が、被災地の状況を確認して把握して対策本部を立ててきちんと動きだしています(自衛隊などはこの時点ではもう動いて下さっています)。

「まずは自分の事を考える」

それは、「その邪魔をしない」というとても大切なことをあなたはしているという事です。

災害時には毎回、何もしていない(できない)自分の無力さに打ちひしがれているという連絡がひっきりなしに届くのですが、そんな事はないんです。

あなたはちゃんと「被災地の方々のために協力していた」んですよ。

実際に「困ってる」という声がSNSには上がります。

そこに「自分は被災地に向かう」という誰かの発表があると必ず「被災地に向かってる人だっているじゃないですか!自分もなにか~」と必ず私の所へも届くのですが、ここで記事の一番上の画像をもう一度ご覧下さい。

SNS上のSOSは奥の方が掲げている「助けて」です。

その方には渋滞最後尾で足止めをくらっている自衛隊のトラックは見えていません。

救助が「なぜ」こないのか、被災地へはその情報も届かないのです。

頼りない電波の中で限られた情報を頼りに必死で安全な場所を探しながら、残り少ない充電は近しい人達の生存確認にあてたり、自分の状況を伝えたり、SOSを発信したり…

被災地の外からは見えている「全体の被災状況」が、被災地の方々には見えていないんです。

それだけで心がくじけそうになっているのに、いつくるのかわからない救助をただ待つばかりなのはどんなにつらい事か分かりますよね?

これまでにあなたが経験した大きな災害時の時を思い出してみて下さい。

パニックに陥っていてすっと思い出せなければこちら

メモ

1995年 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)

2003年 十勝沖地震

2004年 新潟県中越地震

2011年 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)

2016年 熊本地震

2018年 北海道胆振東部地震

2024年 能登半島地震

で、ググるなどして頂くと、その時の状況などたくさん出てくると思いますので参考にして下さい

テレビをつければ知れることが、電気がこないテレビのない避難所にいたら「分からない」んです。

「救助なんて来ないんじゃないか、自分たちの声はどこにも届いていないんじゃないかって、ずっと不安だった」と被災者の方に言われた事があります。

だから、「邪魔になるような事だけはしてはいけない」って、上記のメモにある災害を見たり聞いたり実際に経験してきた私たち世代はみんな知っているんです。

だから、まだ動かない(被災地へ向かわない)。

若い皆さんもこれだけは覚えておいて下さいね。

今は、その時、自分は大丈夫なのかを考えて備える時だと、それで良いんです。

「人命が最優先」は絶対

災害のニュースなどで「72時間の壁」または「黄金の72時間」という言葉を聞いたことはありませんか?

これは、阪神・淡路大震災の時の生存率のデータと人間が水を飲まずに過ごせる限界の日数、とからだした数字で、「72時間(3日)を過ぎると生存率が著しく低下する」だから、「人命救助は災害が発生してから72時間が勝負」という事で、そういう言葉ができました。

その間に1人でも多くの命をと全国から救助のプロ(自衛隊だけでなく災害支援車両なども含みます)が向かいます。

SNSでは再三に渡り、何度も発信される「今は来ないで下さい」を目にされた方は多いかと思いますが、それらは「人命救助のプロたちの邪魔をしないで下さい」です。

どんなに言い方を変えても伝わらない人が一定数いるのは、仕方のないことなのかもしれませんが、皆さんは知っておいて下さい。

72時間は人命救助を最も優先しなければならない時間です。

それはつまり、五体満足で避難できた自分は後回しにされる時間だと分かっておいて下さい。一人でも多くの生存のために72時間は自力でこらえて下さい。と、これは確かドラマの中での政治家のセリフでしたが2ちゃんの実況スレが大荒れしていた記憶があります。

その時の私はこれがこれから起きる現実なんだろうなと多くの意見で大荒れするその様子も込みでそう思いました。

人命が最優先と人命救助が最優先の違い

いかなる時と場合でも人命が優先です。

この「人命が最優先」は人命救助が最優先という意味ではないのですが、今回ご連絡を頂きお話をした方のうち数名はそこがあまりピンときていなかったようで、「あぁ、だからか」と大きな気付きがあった大切なことなので今ここでも改めてお話させて頂きます。

『人命』には救助される側の命はもちろんですが、救助する側の方の命も含まれます。

Aさんを助けるためにBさんが自らの命を危険にさらす状況に陥ってしまったらAさんとBさんを助けるCさんが必要になります。

Cさん一人で二人を救助する事はできないのでDさんを呼びに…なんて、危険にさらされる命がどんどん増え続けていってしまっては助かる命も助からなくなってしまいます。

そんな事は救助の現場ではあってはならない事です。

ここからは「レスキュートリアージ」についての説明になります。

PTSDを引き起こし兼ねない表現を使いますので、つらい経験がある方はクリックせずにお進みください。

SNS上の「邪魔になるだけだから行くな/来ないでください」の意味がお分かり頂けましたでしょうか?

今は、自分は大丈夫なのかを考えて備える時です、しっかり自分のことを考えましょう。

準備不足のボランティアほど邪魔なものはない

「72時間は人命救助が最優先だとはいえ、避難所の皆さんにもせめてご飯を届けたい」はもっともです。

ですが、上記でお伝えしたように、❝そのせいで❞プロの仕事の邪魔をすることになっては本末転倒ですし、何より、そんなにすぐに向かえる準備が出来ているボランティアは少ないと思います。

被災地、及びその周辺に残っているものは、全て被災されている方たちのものです。

震災直後にはまだ水がでる所、ガソリン、食料その他が残っている場所もありますが、それはそれ以降、(ライフラインが整うまでの間)被災されている方たちの命を繋ぐために大切に使っていかなければならない貴重なものです。

県外から行った人が消費していいものではありません。

私が初めて被災地へ向かうボランティアに参加した時「全て自己完結できない方はこの車に乗らないで下さい」と、主催の方がオムツを用意してくれていて、それを購入してその場で履いてから車へ乗せてもらいました。

「仮設トイレは被災されてる方たちのために用意されたものです。我々は使えません。次に参加される事があったらその時にはこれらも自分で用意してきて下さいね」と言われ、自分がどれだけ浅い考えしか持たない想像力の欠けた人間だったのかと恥ずかしくなったのを覚えています。

だから、あなたも「何もできない自分」に心を痛めなくて良いんです。

  • そこまでの準備が整えられていない時には
  • 被災地から要請があるまでは

被災地へ向かっても自分にできる事はない、それだったら、せめて邪魔にならないよう余計なことをしない「何もしないをする」で良いんです。

それは、見てきた世代の私が「それで良い」を保証します。

今はしっかり、その時に備えて自分は大丈夫なのかを改めて考えて過ごして下さい。

冷静に、落ち着いて、

大きな災害の直後は必ず、「SNS上で毎日喧嘩みたいに色々な意見が飛び交っていて何が正しいのか分からなくなってしまって」と心を痛めているお声が私のところにも届きます。

その後に予想される「だからやめろと言ったじゃないか」を少しでも減らしたい、経験者として止めなきゃ!な我々世代の言葉と、そこまでを想像できずに居ても立っても居られなくて行動にうつす若い方たちの言葉

どちらもつい口調が強くなってしまうのは、それだけ皆が被災地を思ってのことだと、皆が必死なんだと、なので、そういう思いでいれば良いと私はお伝えさせて頂いています。

どちらが正しいとか間違ってるとかそんな判断はしなくて良い、あなたはまず冷静に「自分のこと」を考える時なのですから。

つらい時にはSNSを離れて、楽しいことをして下さい。

「こんな時に不謹慎じゃないか…」は持たなくていい罪悪感です。

東日本大震災の時、誰かが言った

「被災していない我々が全力で経済を回し続けなければ日本が終わる」

「経済を回せ!被災地のために!!」

この言葉を私からもあなたへ伝えます。

一番大切なこと

「備えましょう」「経済を回そう」が「買占め」に繋がらないようくれぐれもそれだけは気を付けて下さい。

災害時にはなぜか被災していない場所でもスーパーやコンビニから一気に物がなくなる事があります。

小さな個人的な買いだめのつもりでもそれはその後の品薄・流通の混乱・その他を引き起こします。

日常生活を送れる所で非常事態を招きませんよう、あなたの行動が集団パニックの引き金にならないよう、どうかどうか普段通りの生活を送ること、冒頭でお伝えしたように「何もしないをする」を思い出して下さいね。

今日の記事、ポスターについて

トップ画のポスターはイラストレーターのMOAI Yui(モアイユイ)さんに今日の記事に合わせて描いて頂きました。

ご本人も北海道胆振東部地震での被災経験をお持ちです。

「これは大切なことだと思います。多くの方に知って頂きたいことなので。」とクレジットを入れずに提供して下さいましたので、こちらのポスターに限り、無料で二次使用(利用)可とさせて頂きます。

但し、商用利用の場合には、きちんと作家さんに「依頼し直し」して新たなものをご自身でご用意下さいますようお願いいたします。

また、細かい話にはなりますが、グーグルアドセンスなど収益が発生するブログやサイト、収益が発生する各SNSなどでご利用になられた場合、こちらのポスターを掲載する事によって発生した収益分は災害義援金に充てて下さいますようどうぞよろしくお願い申し上げます。

今日の記事は、2024年に発生した能登半島地震の後に書いたこちらの日記記事より抜粋したものとなります。

MOAI Yuiさんについてのご紹介(お仕事の依頼)や能登半島地震の時に起きていたことなどは、そちらにございますので、お時間のある時にそちらも合わせてお読み頂けたらと思います。

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