SNSがこんなに普及する前、しかもそれはほんの…たったの数年前まで、フェレットが輸血を必要とする状態になった時、頼れるのは(今とは比べものにならないほど)小さな小さな限られたコミュニティ内で得られる僅かな情報だけでした。
「フェレット 輸血」で検索をかけて今日(2019年現在)一発目に出てきたヤフー知恵袋にはこう書いてあります。
Q.
飼っているフェレットの体調が悪く病院に連れて行きました。
医師の説明の中の選択肢に手術があり、うちのフェレットが貧血気味であることから、輸血を行ってから手術という方法もあるとのことだったんですが、動物が献血を行っているとも考えにくく・・・
輸血用の血液ってどこから入手しているんでしょうか?
A.(ベストアンサー)
色々です。
動物病院で輸血用に犬猫などを飼ってる動物病院もあります。
横のつながりで貰ったりするのかも。
A.(ベストアンサー以外の答え)
Mixiや掲示板等で「血液が足りません。近隣の方で提供して頂ける方」というのを良く見ます。
私個人的には「提血用の動物を飼っている規模の病院」がベストだと思っています。うちのかかりつけ医はフェレットを8本飼っている、とHPに書いております。他人様の善意に頼るのは限界があります。そういう病院を探されてはいかがでしょうか。
A.(同上)
うちの病院では供血犬や供血猫を飼っているので、輸血が必要になったらその場で血液を採取します。
供血犬や供血猫を飼っていない病院では、そこの病院にかかっている飼い主さんに緊急の時にお願いする形で協力してもらいます。
一応、その基準になる年齢や体重があり、健康状態がいいことはもちろん、輸血に当たっての血液型などは検査済みでしょう。
輸血する際にもドナーとレシピエントのクロスマッチは行ないます。
フェレットもエキゾ(犬・猫以外の小動物は動物病院ではエキゾチック・アニマルと称し、私たちは略してエキゾと呼びます)をよく診ている病院では、その病院にかかっているフェレットの飼い主さんに緊急の時の輸血への協力を要請していることがあります。
そのような病院では、待合室にそういった張り紙をしていることも多いです。
等々、それ以降にも「犬の場合ですが」として、何件かの書き込みがありました。
これ、2010年に書かれたQ&Aです。
これが今でも「検索一発目」に出てくるのです…
これは非常に由々しき事態です。
情報として古いうえに、「参考にならない」お話しがアンサーとして載っています。
もはや「知恵袋」としての用を成していません。
それを踏まえ、今はもうまったく事情が違うというお話しをさせて頂きますので、どうか正しく「今の事情」を知っておいて下さいね。
輸血に協力(供血)するには
まずはじめに…
フェレットの輸血用血液製剤は日本国内では手に入りません(2015年時点)
なので、誰かから血を分けてもらう「輸血」を必要とする子は想像しているよりたくさんいたのだと知っておいて欲しいのです。
上記にもある「mixiや掲示板」は基本的には知り合い同士で繋がるコミュニケーショツール、または知ってる人しか知らない(利用していない)限られた場所です。
昔はそういった場所かペットショップや動物病院の貼り紙でくらいしか「供血に協力してください」を言う事も見る事も出来ませんでした。
だから、「助けて下さい」の声が情報として届いていなかっただけなのです。
今こうして誰でもが、どこまででも広がる横の繋がりを持つ事ができるSNSという便利なオープンスペースが出来た事で、それらを目にする機会が増えてきてやっと「フェレットの供血」という言葉が、多くの飼い主さん達の目に留まるようになってきたってだけなんです。
あの頃から、輸血に頼らなければならない子達はいたのですよ…
多くの「助けて下さい」の声が届くようになった事、それが意味するところは、もうあの当時のように、上記のアンサーにあるような「他人様の善意に頼る限界」なんてものは無いって事だと私は考えています。
FacebookでもInstagramでもTwitterでも、「助けて下さい」を見かけたら、是非、皆さんに「協力してあげよう」と前向きに検討して欲しいって思っています。
「でも、健康な体から血を抜くなんて何かしらリスクがあるんでしょ?」とお思いのあなたも、先ずはどうか最後までお読み頂けたらと思います。
供血に協力できる条件とは?
大前提の条件として
- 健康状態が良いこと
- 1才~5才以下(2~3才が最も適しているとされる)
- 体重1kg以上(1.2kg以上が好ましい)
とされていますが、
この「健康状態が良い」については、その場で血液検査を行うので、飼い主さんがお家で「うちの子はどうなのかしら」と考え込んでしまう必要はありません。
また、副腎疾患で片副腎の摘出手術を受けた子でも供血に協力した事があるよ!というお話しを実際に聞いていますので、いかなる場合であっても、協力してあげられるかな…と思った時には、
自己判断はせずに、まずは病院で直接「うちの子は?」と確認をしてみて下さい。
「犬や猫とは違う」クロスマッチテストについて
一般的なフェレットの輸血時における一般的な前提は
血液型の適合が必須とされる犬や猫と違い、フェレットにはその検出できる血液型がまだ見付かっていないため、クロスマッチテストを行わなくても、ほとんど問題はない(2015年時点)
です。
タイトルにある「犬や猫の場合を参考にしてはいけない理由」は、これです。
「犬や猫とは違う」と獣医学的にそう言われているのですから、「犬や猫の場合のお話し」は何も参考になりません。
そして、このクロスマッチテストというのは、輸血を受ける子と供血する子との血液を混ぜ合わせて反応を見る交差適合試験の事を言うのですが、
例えば、輸血を受ける側の子が、多くの血液とは適合しない可能性を持っている状態の場合などにはこの一般的なそれには当てはまりません。
また、「一般的なフェレット」の解釈は以下の通りです。
「一般的なフェレット」ではないフェレットとは?
言語表記として当たり前の事ですが、現在、日本でお迎えができる多くのフェレット達が「一般的なフェレット」です。
その中で、
- アルビノニョロはアルビノニョロ同士での供血協力となります。
- アンゴラニョロはアンゴラニョロ同士での供血協力となります。
アルビノニョロやアンゴラニョロの血液は一般的なフェレットの輸血には適していないので、一般的なフェレットの供血には協力は出来ません。
また逆も然りなので、輸血を必要としている子の情報は前もってしっかりと確認しておいて下さいね。
※特別な記載が無い場合は「一般的なフェレットの供血協力のお願い」だと考え頂いておいて間違いないです。
よくある誤解
供血の話しをしている時に「ファームによって」という表現をする人がいますが、それは正確ではありません。
正しくは、上記で言った通り
チェコゴラ=アンゴラフェレット
等というだけの事で
ファーファームでもアンゴラではない子はアンゴラフェレットではないので、ファームごとでの条件分けでは無いという事を今ここで頭に入れておいて頂けたらと思います。
※病院での血液検査で分かります。
よく分からない時、こういう切羽詰まった状況の時には、ネットや詳しい人の話ではなく、病院できちんと検査をして調べて下さい。
また、販売証明書があてにならない事があるので、その点はご注意下さいね。
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いざ協力する時(採血の仕方)
色々な経験談を聞かせてもらい、採血の方法は病院によって違うという事が分かっています。
採血量は体重の1%未満(体重が1㎏なら10ml以下)がその基準値です。
これはどこの病院でも変わりませんが、その量を無麻酔で普通の血液検査のそれと同じように採血する病院と全身麻酔を施してから行う病院があります。
(私が聞く限りの例では、麻酔をかけてから行う病院の方が多いように感じます。)
麻酔を施してからの採血では、20~30分ほど時間をかけてゆっくりゆっくりと抜いていきます。
その時、
前夜からの絶食+当日の朝から絶飲を指示される病院もありますし、当日(または数時間前から)の絶飲食を指示される病院もあるようです。
これは、本当に病院によって違ううえ、「フェレットの供血」というのは、我々人間の「とにかく血を下さい」という献血とは違い、輸血を必要としている子に『合わせて行われる』場合がほとんどなので、
1つでも多くの、こういう例もある、ああいう例もあった、という様々な「そういう場合」を知識として幅広く備えておいて頂いた方が、いざその時になって「それなら止める」となってしまう事が減るかなって思うんです。
今、言ったように、「フェレットの供血に協力する」というのは、
我々人間の「いつか誰かに役立つストック血液」の提供ではなく、「今、輸血を必要としているその子に渡す血液」の提供となります。
直前で「やっぱり止める」は輸血を待つ飼い主さんには、とてもとてもキツイ事です。
なるべくなら、なるべくなら…出来る限り協力をしてあげて欲しいと思うのです。
剃毛について
今日のアイキャッチ画像の男の子をもう一度ご覧ください。
首元に毛が無い状態なのは、他の子に血を分けてあげた優しい勲章です。
これも「病院によって」となりますが、麻酔の後、剃毛をしてからの採血となる場合があります。
もちろんちゃんと生えてくるので心配するような事ではないのですが、例えばその直後に何かのそういったイベントに参加される予定などがある場合には、「剃毛するかしないか」の確認もされておくと良いんじゃないかと思います。
気を付けて欲しいこと
「供血に協力して下さい」を見かけたら、まずは、そこに記載されている条件をよく確認して下さい。
輸血を待っている状態の子というのは、それだけ緊急事態である場合がほとんどです。
そういう状況にある飼い主さんに、「書いてある事」を何度も説明させる事が無いようにくれぐれもお気を付け下さい。
また、その条件に合った場合の病院へのお問い合わせは「供血に協力してあげよう」という意思が固まってからにして下さい。
「色々聞いてから考えよう」となる気持ちも分かるのですが、病院には他にもたくさんの患畜さんがいます。
闘病中のその子や飼い主さんが肩身の狭い思いをする事になってしまうかもしれません。
きちんと供血に協力できるその条件に合う事を確認したら
供血に協力してあげたいという気持ちを持って、採血の仕方等で不安に思っていることや「疑問を解消するために問合せをする」のが一番良い方法かと思います。
まとめ
今日のこのお話しは、記事中でも書きましたが、「こうだからこうなんです」といった類のそれではありません。
こういう場合もこういう場合もあるからね!知っておいてね!ってほんの参考程度にしかならないです。
それでも足らない、これ以外の事だってきっとたくさんあるんだと思います。
「フェレットの供血」ってそれだけ、一般的に認知されてから日が浅いのです。
ちゃんとした経験談より、根も葉もない根拠も無い、不安になるような噂話しの方がよっぽど出回っているんじゃないかと思わざるを得ないような感覚にさえ陥ることがあります。
だからどうかどうか、これをお読み頂いたあなたには、少しでも、「今」の事を知って欲しくて書きました。
少し前までの供血事情やそれによって出回った噂話など、それらをもっと詳しく参考にして頂ければ、輸血・供血にもっと理解を深めて頂けるのではないかと思います。
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