現在、法律上での「伝染病」は主に動物たち(家畜)の伝染病を指しています。
1999年に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (感染症新法) 」から、「伝染病」という名称を人間のそれの場合においては全て「感染症」と言う事になったのです。
「感染」と「伝染」では言葉の意味が違います。
だから、当然、「感染症」と「伝染病」とではまったくその意味合いが違ってきたりもするのですが、ちょっとこちらをご覧ください。
お分かり頂けますでしょうか?
「感染」がうつる・染まる性質の良し悪しをそれほど問わずに使うのに対して
「伝染」は主に悪い性質がうつる・染まることを意味する言葉として使われるという違いがあるのです。
「人のそれには使わなくしよう」となる過程には、こういった、「伝染病という名称が暗いイメージをもつことから」(コトバンク原文まま)という理由がありますので、
諸々は…
お察しください
という事です。
ここまでは、誰でもが理解できる範囲です。
例えそこに悪意がなくても、その言葉で「誰かを傷付けてしまう事がないように」という気遣いから、そうなったという事ですから、覚えておいて下さいね。
2018年現在では、もう、
ヒトに対しての場合は、いかなるそれでも「伝染(病)という言葉は使わない」という事になっているのです。
ややこしくしてるのは「一部の人の感情論」最近では(私もそうだったりしますが)「ペットを動物扱い」するとお叱りを受けたりします。
「ペットフードは「餌」ではなく「ごはん」だ!」みたいな事から始まるそれは、最終的には「自分の子(ペット)を愛してないから、そんな風に言えるんだ!」くらいまで、
ぶっ飛んだ感情論に発展したりするので、もう、そうなってくると、お話しにも何もならないのです。
だから、そういう方達を刺激しないように、多くの人たちが、言葉を選び過ぎた結果
- 感染(症)と伝染(病)の違いは分かってない(本人が「その事」に気付いてない)
- うつるって「イメージ」先行(「それ以外がある事」を考えない)
で、今のこの
「病気についての詳細は本当はよく分かっていないけど、とりあえずなんか怖い」から、闇雲に病気をただ嫌悪する風潮になっているんだと思います。
病気について冷静に話しをする時に、第三者の感情を意識するなどと、全然しなくて良い余計な配慮をして、変に濁すと「分かりづらく」なるのです。
「感染症」と「伝染病」の違いをハッキリ知っておけば、「なんか怖い」が「じゃあ、どうしたら良いのか」に変わります。
「ワクチン接種証明書を提示して(させて)おけば問題ない」みたいな発想がそもそもの根本からズレてる事が分かります。
この子達が罹患しやすい病名・症例をあげてその違いについてお話しをさせて頂こうと思いますので、今日はきちんとその事を覚えて帰って下さいね。
感染症と伝染病の違い
『病気』の話しをする時の定義は
- 細菌、ウィルス、寄生虫などの病原体が体内に入ることを「感染」
- それら病原体によって病気が起きると「感染症」
です。
そして、それが「動物たち」の場合においてのみ、その感染症がうつることを「伝染」と言うのです。
起きている現象は同じでも「ヒト」の場合では「感染」と言わなければいけないだけの事です。
要するに
- 体内に入った病原体(感染した病原体)がもとで起こった病気が「感染症」
- 「感染症」のうち、生物から生物へとうつるものを「伝染病」
なのです。
「ヒト」の例でみてみよう
ウィルスや細菌による感染で起こる「扁桃炎」や「虫垂炎」は『感染症』です。
でも、他者にうつる病気ではないので『伝染病』ではありません。
「コレラ」や「チフス」は人から人へうつります。
昔はそれらを「伝染病」と呼びました。
でも、今は「感染症」と呼ぶのです。
鳥インフルエンザは鳥から人にうつります。
昔は「伝染病」と呼ばれたその病気は、
人にうつった先では「感染症」
鳥にうつった先では「伝染病」
もう少しややこしく言うと
鳥インフルエンザという病気は
人に感染して、感染した人が発症した時は「感染症」
鳥に伝染して、感染した鳥が発症したら「伝染病」
という扱いになるのです。
このあたりが、ややこしくなる原因です。
もともと「伝染病」と言われていた「人の病気」は現在、法律上では7種類の感染症に分類されていて、
「コレラ」の場合、腸チフスとパラチフスが「2類感染症」、発疹チフスが「4類感染症」に属します。
「鳥インフルエンザ」の場合は、A(H5N1)及びA(H7N9)の鳥インフルエンザは「2類感染症」に、それ以外の亜型の鳥インフルエンザは 「4類感染症」に位置付けられています。
「7種類の感染症」とか言い出したら終わらないし、そもそも「フェレットのお話し」に「ヒトの話」は全く関係無いので、もう止めます。
要は、
【感染】①病原体が体内に入ること②他者の性質に染まること
【伝染】①病原菌による病気がうつること②悪いことがうつること
【感染症】病原微生物が原因で起こる病気
【伝染病】感染症のうち、うつる病気
【法律:感染症】7分類で定義されている
【法律:伝染病】主に家畜に用いられる
出典:言葉の救急箱
ですよって事で、この子達(動物たち)の「感染症」と「伝染病」を知るためには、その辺の事をきっちり知っておきましょうね!ってお話しです。
フェレットの感染症と伝染病
先に言っておきましょう。
この子達の感染症のそのほとんどは「伝染性」の病気(=伝染病)です。
ただし、
- 予防(ワクチン接種など)していたらうつらない
- うつっても、健康体なら発症しない
ものが多く、闇雲にただ怖がっているだけでは
- 発症していないだけで感染している場合がある
- うつったから病気になったのではなく自己の免疫力が低下したから発症しただけ
といった、真実が見えなくなってしまいます。
それが分かっていないから、我が子の病気と向き合う前に「誰かのせいにする」が起きるのです。
感染源を探すというのは「他へ広めない」ためには大切な事ですが、その子の「治療」には何の役にも立ちません。
目の前にいる「その子のために」「今」何をするべき時なのか、それを冷静に考えてあげられるよう、その事を最初からきちんと知っておいて下さいね。
「ワクチン接種証明書の提示」が意味すること
「ワクチン」というのは「我が子の身を守るために」接種するものであって、
「ワクチン接種証明書の提示」というのは、多くのフェレットが集まる場所などにおいて、「ここへ来た事によって何かが起きた時にあなたのせいにはしませんよ」って証明させる為のものなのです。
この表現にはちょっと語弊がありますが、でも、要するに、いわゆる私のような預かり施設を運営している側が「一切責任を負いませんよ」という確約をとるために提示してもらう物だと思って下さい。
「何かあったら怖いから全ニョロに証明書の提示をさせるべき」はこちら側のセリフです。
何かしらの理由があって、ワクチン接種が出来ない子のパパやママが「うちの子に何かあったら困るからワクチン接種してない子とは遊ばせられない」
は、まぁ正解とは言えないけど、少なくとも…「お気持ちは分かります」の範囲。
※出来れば、そういう子は「他動物」との接触は一切ない方が良いです。
ただ、「うちの子はワクチン接種しています!だからあなたの子の接種証明書も見せなさいよ」に関しては、病気のこともワクチン接種の意味も役目も何も分かっていない人の発言だっていう事です。
これ以上は話がそれるので詳細はこちら『フェレットの「ワクチン接種について」預かり施設が本当のことを教えよう!』で、ご確認頂ければと思います。
「感染症の疑い」と言われたら
この子達が「某かの検査」をした時、そこに「何らかの異常」が見られたら、大概の場合、その時点で「感染症の疑い」は出ます。
「感染症の疑い」というのは、お医者さんの口から出るワードとしてものすごい高確率で発せられる単語だと知っておいて下さい。
だから、その時点で怖がる必要なんて無いのですよ。
そもそも「疑い」で不安になったりしなくて良いのです。
上記でも書きましたが「感染症」は全てが「つい最近、誰かからうつった」というものばかりではありません。
まるで犯人捜しのように思い当たる何かを探して自分や誰かを責めたりしている場合ではないんです。
その「感染症の疑いがあるので~」の一言で不安を無意味に募らせて、その先をちゃんと聞いていない飼い主さんが「結構な割合でいる」そうですが、ここで肝心なのは
「感染症の疑いがあるので~」の『ので~』以降ですからね。
これまで受けた相談や何かを見ていても、伝染病と感染症の違いが分かっていない人は「100%聞いていない」と言っても過言ではないってくらい「~」以降を聞いていません。
先生が「~」を話している時、頭の中では100%感染源探しをしています。
もう一度言います、
感染症は、つい最近、誰かからうつった病気という意味ではありません
そして、その子の治療に感染源は関係無いのです。
だから、その場で先生に「こういうフェレットと遊んだ」とか「こういう集まりに行った」とか言ったところで、「その子の治療とは関係無い話」なんですよ。
「感染症の疑いがある」と言われたら、まずは、冷静になって、落ち着いて、先生のお話しをきちんと聞いて、その子の体に起きている事を「理解」して治療やその後を考えられるように、今この場からなっておいて下さいね。
まとめ
ここまでで十分にお分かり頂けたかとは思いますが、「感染症の疑い」と「感染している」と「感染症を発症した」は全部、意味が違います。
感染症というのは、病原体(細菌やウイルス、寄生虫など)が体内に入り、何らかの症状(発熱や下痢等)が出る疾病の事を言います。
しつこいようですが「=伝染性の病気がうつった」ではありません。
また、感染しているからといって、即座にその病気を発症するというものばかりでは無く、一生涯に渡り、その病気を発症しないという事だってたくさんあります。
発症のタイミング、発症するかどうかは、その病原体の感染力と体の抵抗力とのバランスで決まるのです。
同じ病原体に侵入されても、「一生涯に渡り発症しない子もいれば、即座に発症して死に至る子もいる」というのが感染症というものです。
コロナウイルス(グリーンウィルス)等がその代表例です。
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フェレット コロナウイルス(通称グリーンウィルス)伝染性カタル腸炎とは
1990年代にフェレット(ヨーロッパケナガイタチ)の伝染病としてアメリカで大流行した 「ECE(動物間粘膜性腸炎)」 「グリーンウィルス」 などと呼ばれる消化器系の感染症。 日本でも2000年以降のつ ...
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また、「グロブリン値が上がった(A/G比が下がった)」等の場合にも真っ先に「感染症の疑い」と言われます。
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フェレット「グロブリン値が上がる=A/G比が下がる」その見方(計算式)と考えられる原因
グロブリン値とは、総蛋白からアルブミンの値を引いた数字(値)の事を言います。 そのグロブリン値というのは、そのもの自体が上がった下がったという見方をするものでは無く、アルブミンとの比率を見ます。 それ ...
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今日のアイキャッチ画像は、その「感染症の疑い」と言われた事がある、うちのわさび君です。
「感染症の疑い」と診断され、様々な検査をしましたが、原因は分かりませんでした。
それどころか、疑わしき感染症は全て陰性でした。
その後、A/G比も一度、正常値に戻りかけて落ち着いたりもしたのですが、この写真を撮ってもらった時にはまた基準値を大幅に下回る数値になってしまっていました。
それは、大きな病気が進行している事が分かって…というお話しになるのですが、感染症とはまた別のお話しです。
ただ、免疫異常・免疫力が落ちている状態である事は間違いないので、色々な事に気を付けてあげています。
続きはこちら⇒末期の腎不全【フェレットわさび】尿毒症とは?
ちょっと長くなって分かりづらくなっちゃったような気もしないでもないのですが、今日のお話しで「感染症」について、ご理解頂けましたでしょうか…?
病気について正しく知識を持っておく事で、過剰な心配や恐れは消えます。
言いたかった事はただ1つ
「感染症の疑い」でどうか不安にならないで下さい。
って事だけです。
どうか、どうか、「その子の体」について、いつでも冷静に考えてあげられる飼い主さんでいてあげて下さいね。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡