フェレットの事故で一番多く、また、その原因がそっこら中にあるのが「フェレットの誤飲・誤食による消化管内異物」です。
これは読んでそのまま、食べ物では無い物を誤って食べて(飲み込んで)しまい、それが消化管内にある状態から、その異物のせいで「何らかの異常が起きてる状況」を「消化管内異物」と言います。
その状態になってしまったら、点滴や某かの処置ででも自然に(便として)排泄されなければ、開腹手術でしか助けてあげる方法はありません。
だからと言って、勝手な判断で整腸剤や下剤を飲ませるなど言語道断。
そして、一言で「消化管内の異物」と言っても、「胃」なのか「腸」なのかで色々と変わってきます。
フェレットの消化管とは?
⑦ 胃
単胃で、よく広がる
※肉食獣のため「腸」がとても短い
※盲腸はない
⑫ 小腸
約2m弱
大腸(図に無し)
約10㎝
※口から入った食べ物は3~4時間で消化管を通過します
図でも注釈でもお分かり頂けるように、大きな「胃」から取り出すのと、複雑で長い形状の「腸」から摘出するのとでは手術の難易度が違います。
また、胃に異物があるだけの状態なのと、それが腸に詰まってしまったのとでは、その深刻さが全く違います。
深刻さが違うとはいえ、どちらも深刻な状態である事に違いは無いので、今日は、フェレットの事故ワースト1位の誤飲・誤食事故について、
「誰にでも起きうる可能性があるけれど、誰でもが防いであげられる事も多い事」として、原因から症状、そして絶対にやってはいけない処置なども含めてお話しさせて頂こうと思います。
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誤飲・誤食だけならまず様子見、消化管内異物は即手術が望ましい
これまで聞いた事がある「実際に誤食(誤飲)していた物」の例です。
- ヘッドホンの耳のところ
- 耳栓
- お風呂の栓
- クロックス等のサンダル
- ゲーム機のコントローラーのスティックのところ
- ボールペン等のグリップ部分
- 消しゴム
- ヘアゴム
- ビニール製の縄跳び
- テレビのチャンネルやエアコンなどのリモコンのボタンの部分
- 何かの底に付いてる滑り止めの部分
- 家具の緩衝材
- ピアスのシリコンキャッチ
- 靴底
- 防水パッキンのビロビロしてる部分
- 発泡スチロール
- トイレ砂
- ぬいぐるみの目玉(フェルト生地)
- ハンモックの生地
- 等など
ザっと「分かっている物を思い返した」だけでも、これだけあります。
これらの多くは「自然排泄」される事も多く、症状が何も出ていない状態であれば「様子を見ましょう」と診断されたりもします。
だからと言って、この記事を読んで「じゃあ良いか」と「病院へ行かなくて良いや」と勝手に思わないで下さいね。
自己判断ができない場合には、きちんと獣医さんにそう診断されてから、その指示通りの様子見でなければ、手遅れになる事がありますよ。
異物が消化管内に詰まってしまったら(詰まるのは小腸が多い)即オペで取り出さなければ命にかかわる事ですし、そうでは無くても、異物が消化管内で常に粘膜を刺激し続ける状態は「潰瘍の原因」になります。
また、「体調不良に気付いて病院で検査をしたら消化管内異物だった、摘出手術を受けたけれど、それが何か思い当たる物がない」なんて例もあります。
冒頭でも書きましたが「何らかの異常が起きてる状況」は「ただの誤飲・誤食」では無く「消化管内異物」の状態です。
体調不良に気が付いて病院へ行くまでの間に落ちてしまった体力を入院処置で回復させて即オペとなる事が多いです。
この時、体力が落ち切ってしまっていたら手術は出来ません。
そうなったら死んでしまいます。
絶対に勝手な判断での「様子見」はダメです!!
「誤食させてしまったかもしれない」として、速やかに獣医の指示を仰ぐ事を心掛けて下さいね。
私の経験談:スポンジを食べちゃったかも!?獣医に相談したけど、スポンジってレントゲンには写らないの?!
消化管内異物の症状とは?
「オモチャや何かを目の前でモグモグしていた」ら、すぐに止めさせられるので、誤食にまでは至らないかと思います。
誤食させた事に気づくその多くは、オモチャを片付けている時やケージの掃除をしていて「食いちぎった何かを発見した」場合がほとんどです。
その瞬間、焦る気持ちは分かりますが、ニョロ本人の様子に変化が無ければ落ち着いて!一先ずは大丈夫だから!
メモ
誤飲誤食等で消化管内異物による体調不良の本格的な症状がでるまでの時間は、個体差、食べた物によってマチマチですが、フェレットの消化管の長さから考えると早くても4~12時間後以降だと言われています。
後述しますが、「消化管内異物」は数日から数年かけて少しずつそうなっていく事例もあります。
千切れたオモチャを見付けても慌てないで、まずは落ち着いて冷静に状況を判断して、病院へ電話をするなどして先生の指示を仰いで下さい。
この時、
- 元気がない
- 食欲がない
- 惰眠状態(ずっと眠っている、もしくは起こしてもまたすぐに寝てしまう)
などの症状が見られていたら、それは消化管内異物の症状かもしれません。
きちんと症状を伝え、すぐに病院へ行く事をお勧めします。
また、上記に平行して
- 便の異常(下痢・便秘・便が小さくなる・細くなる)
- 吐き気のためにヨダレが出ていたり、口元をひっかくような仕草を何度もしたり
- 嘔吐
の症状があれば、すぐに、なるべく急いで病院へ連れて行ってあげて下さい。
誤飲した異物が大きい時には、幽門(胃から腸への出口)や腸管を通過する時に強い痛みがあるので、
- かたく丸まった姿勢のままでいる
- 歩くのも嫌がる
これは、我々人間が腹痛の時にお腹を丸めて動けなくなるのと同じです。
様子を見ようと無理に伸ばしたりせず、キャリーに入れる時も、なるべく、その姿勢のままでいられるようにそーっと丁寧に連れて行ってあげて下さいね。
腸管がふさがってしまうと急激に衰弱します(それだけ死に直結している緊急事態だという事です)。
- みるみるうちに毛がパサパサになったり、目に力が無くなる
- 腹部が膨れる
ような時には、かかりつけ医がやっていなければ、救急病院へ至急連れて行ってあげて下さい。
大至急です!
病院での診断・治療とは
ここまでに何度も書いてきましたが、誤飲・誤食で病院へ行ったら「様子を見ましょう」と言われるか、消化管内異物として「開腹手術」のどちらかしかありません。
もちろん、様子見とは言っても、異物が体内にあるわけですから、排出するための投薬(緩下剤や消化管の動きをよくする促進薬)をしてもらったりもします。
排泄されるまで入院処置という場合もありますし、「それで出なかったら開腹手術」となる事もあります。
それは、その子の状態を見てお医者さんが決める事なので、ここで「こうだったら手術になりますよ」というお話しは出来ませんが、その変わりに「開腹手術になかなか踏み切れない理由」をお話しさせて頂こうと思います。
お腹をパックリと切り開く手術ですから、リスクは相当なものです。
誤食させたという証拠が無い場合、本当に消化管内異物かどうか分からない状態で、そんな大きな手術を簡単においそれとするわけにはいかないのです。
消化管内異物は見つけにくい
誤食させた物が確実にあれば、その診断に繋げやすくなりますが、思い当たる物が全く分からず、ただ「何か具合が悪そう」な状態から、その診断へ繋げるのはとても難しいのです。
上記のような症状が出ていても、消化管内異物かどうか判断できず、「原因不明として病院を何件も回ってやっと見つけてあげられた」なんてお話しを、これまでに何ニョロも聞いた事があります。
その理由は
1.レントゲンに写らない
このように、レントゲン撮影というのはX線を通さない(通しにくい)「骨の状態」を見るのに特化している撮影手法です。
ビニールやプラスチックは写りません。
レントゲンに写る、骨じゃない何かは、X線の「妨げになるような物体や液体は白っぽく、気体は黒っぽく写る事もある」程度の事だとお考え下さい。
例えば、スポンジなどは空気(気体)を含んでいるので黒っぽく写ったりする事もありますが、それでも、周囲との写り度の差がなければ写し出されません。
この子達がモグモグしたがる物のほとんどは「レントゲンには写らない」物なのです。
「見落とされた」のでは無く、その多くは「見えない」のです。
2.造影剤(バリウム)検査は…
その物自体がレントゲンに写らない時には、造影剤というレントゲンに写る液体を飲ませて、その動きを見ながら詰まっているかどうかの確認をします。
硫酸バリウムだったりヨード造影剤だったりMRI造影剤だったりとぞの種類はいくつかありますが、それらを総称して「造影剤」と言います。
フェレットでのこの検査ではバリウムを使ったレントゲン検査が一般的だと聞いています。
「絶食のあとバリウムを入れ、30分~1時間ごと(これは先生によってその判断は違います)くらいにレントゲン撮影をして、バリウムが消化管内を滞りなく通過しているかを確認した」というお話しを聞く事が多いのですが、この検査自体が、「普段からフェレットで」やり慣れていないと困難だそうです。
まず、
- 絶食には低血糖症を起こす可能性というリスクがあります。
- 造影剤にアレルギー反応が出る子がいます。
どちらも重篤な後遺症が残る事がある症状です。
そう考えると、この検査自体が(慣れていない獣医さんには)ものすごく怖い事だと思います。
この子達のこの小さなお腹の中に「約2mもの腸」が収まっている事を知った上で、もう一度、上載のレントゲン写真をよーく見てみて下さい。
どれが腸だかお分かり頂けますよね?これほどまでに細いのですよ。
それがどれだけ繊細で大変な見極めになるのかが、これでお分かり頂けるかと思います。
完全に蓋がされるような詰まり方なら話は別ですが、普段のフェレットのそれを知らなければ「滞りなく」の判断はとても難しく、また、異物のある位置がバリウムの流れとは関係が無い場所だった場合、この検査ではそもそも見つけてあげる事が出来ないのです。
典型な分かりにくい症例(寿々丸くんの場合)
「幼いベビフェレに多い○○食い」
「そういう子は大人になっても注意が必要」などと言われたりもしますが、誤飲・誤食に関しての注意は、ベビの時期にどうだったかは関係無く、フェレットの飼い主なら全員が一生に渡って必要な事です。
今日のアイキャッチ画像は3歳6ヶ月になる寿々丸くんのお腹から摘出された異物です。
彼は「口にいれる物を警戒する」という、フェレットにしては珍しいタイプの子なので、3歳6ヶ月になるその時まで誤食に繋がるようなヒヤっと経験は一度も無く、その時も噛みちぎられたオモチャなどは一切無かったため、
嘔吐や下痢などの症状が出た時、「原因が分からない」として誤食の可能性を疑う事は無かったと飼い主さんは言っていました。
病院を何件か回った先で初めて誤飲を疑いバリウム検査を受けたのですが、その時、バリウムは流れてたと聞きました。
それでも、その後の検査で異物を発見して摘出手術に至ったという経緯です。
異物は寿々丸くんの胃の中にありました。
だから、バリウムが引っかからずに「滞りなく」流れていってしまったのでは無いかと推測できます。
このように、ハイリスクな検査の割にはその結果があまり期待出来ない事もあるわけですから、最初から、この検査は「しません」とする獣医さんの言葉も分からなくはありません。
決して、見落としなどでは無く、単純に、この検査では「分からない」事があるのです。
開腹手術の費用(参考)
寿々丸くんの飼い主様が「今後、どなたかの参考になる事があるかもしれないので…」として、手術費用の明細書を資料として提供して下さいました。
これは、あくまでも、「寿々丸くんに今回かかった費用」です。
病院によって、手術箇所によって、異物の大きさによって、入院日数によって…その時々によって金額は全然、変わってくるかとは思いますが、是非、参考にして頂けたらと思います。
飼い主様と寿々丸くん、ご協力ありがとうございました。
早く元気な寿々丸くんに戻りますように☆彡
最終的には「触診」で発見される事が多い
寿々丸くんの症例を含め、これまで何件か聞いてきた例ではそのほとんどが最終的には「触診」が決め手になっています。
上記のようにレントゲンやバリウム検査では物理的に「見えない」「分からない事がある」のですから、発見に至るには、もちろん、それしか無いのですけれど…
そしてそれは、「病院を変えたから分かった」というばかりではありません。
前回は分からなかったけど、一週間後に「やっぱりあった」なども珍しくはないようです。
それは「異物がある位置」にも関係しているんじゃないかなって思います。
食べ物などの残留物があったり、表から触って分かりづらい位置にあったのが、食べられなくなってきたり下痢をしたりしてお腹の中の物が無くなってきたからとか、そのものの位置が動いたからとか、理由は色々考えられますが、とにもかくにも、
「発見」に至るのは「触診」が一番多いです。
時々、獣医さんの評価を「触診だけしかしてくれない」と低くされている方がいるそうですが、このように、それは誤った評価である事を知っておいて下さいね。
勝手にやってはいけない事
誤飲・誤食が疑わしい時、ラキサトーンなどの毛玉排出用バイトを舐めさせたら良いとする人がいますが、「それは止めて下さい」という獣医さんも多いです。
例えば、少量の布や何かであれば、胃酸で溶かして自力で排泄できるはずだったものを、強引に流しだそうとして、「腸に詰まらせてしまう」事になりかねないからだと言われました。
上記でも書いた通り、異物が胃にあるだけより、それが腸に詰まってしまう事の方がはるかに重症なのです。
また、食欲がないからといって勝手にシリンジなどを使っての強制的な給餌をしてはいけません。
胃に異物がある状態や腸に何かが詰まっている状態なのに、更に上から食べ物を流し込んでは、苦しいだけでなく、症状の悪化に繋がります。
強制給餌という処置はどんな場合においても必ず、お医者さんの指示を受けてからでなければしてはいけない行為なのですよ。
上記はいずれも、最悪の場合、死なせてしまう事にだってなりかねません。
間違っても勝手な判断でやってはいけませんよ。
防いであげるには
どこのお家にもあるような日用品や、「まさか」と思う物を「気付かないうちに」食べてしまうフェレットは多いです。
誤飲・誤食防止のためには、なるべくなら、そういう目の届かない場所での放牧はさせないようにしてあげて下さい。
少なくても、かじって遊べるオモチャは、その都度、欠損個所が無いかを確かめてあげて下さい。
取れやすい小さなパーツがあるものは最初からとってしまうか、それでは遊ばせないようにした方が良いかもしれません。
ケージに敷いたマットやハンモックなどもお掃除のついでにチェックも忘れずにしてあげて下さい。
また、ケージ内にいる時など、ストレスがたまると、物をかじって発散しようとする子がいます。
ケージの中にオモチャを入れっぱなしにするのではなく、放牧の時間に遊べるようにしてあげて下さい。
お留守番の時など、寂しくないようにケージの中にオモチャをいれてあげる時には特に壊れにくいものを選んであげて欲しいと思います。
こちら『フェレットが好きなオモチャ!誤飲・誤食に繋がる危険が多い日用品』では、もう少し詳しくそのあたりの事を説明させて頂いています。
そして、消化の悪いドライフルーツが食道や消化管に詰まったという症例があります。
布食いちゃんについて
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まとめ 他にも注意が必要な「消化管内異物」
このように、誤飲・誤食については、ある程度は飼い主努力で防いであげられる事が多いです。
ですが、「消化管内異物」となると話は少し変わってきます。
消化管内の異物として摘出される第一位はオモチャ等の誤食物では無く、「実は毛です」と言い切る獣医さんもいます。
毛球症について
これは、どの子にも起きうることではありますが、個体差もあり全ニョロに対して完璧に防いであげるという事がなかなか難しい症状です。
毛球症のように何年も時間をかけて少しずつ慢性的に胃に異物が停滞すると、「気が付いたら体重がすごく落ちていた」なんて事があります。
その場合、加齢による体重減少との区別が付けづらかったりもします。
手術をしなければ摘出できないそれを見誤れば手遅れになってしまう事があります。
そういう事も含め、毛球症については、こちらの記事などを参考にして頂けたらと思います。
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